漫談で学ぶ、家族法。
どうしても、後回しになりがちな家族法。しかし、案外油断はできない分野です。例えば平成30年、司法試験、予備試験ともに、論文問題で家族法の知識が問われました。
さりながら、あまり時間をかける訳にもいかないのが正直な所。そこで本書の頁数を見てみると、最後の「特別講義」を除いて579頁。有力な対抗馬たる前田ほか『民法Ⅵ 親族・相続(第5版)』(2019年、有斐閣)が445頁であることを考えると、あまりに太いようにも思います。
しかし、実際に本書を読むのにかかる時間は、想定よりも少ないのではないかと思われます。
その大きな要因となるのが、窪田先生のユーモラスな記述です。
判例を引用する際に、「『(中略)法はかくの如き不徳義勝手気侭を許すものではない』!(最後の!は筆者による)と判示した」(108頁)と茶化してみたり、「『まぁまぁ、そんな堅いことを言わずに、差し支えない範囲で……』」(145頁)なんて記述が登場してみたり。さながら漫談です。用意されている設問にも、クスリとさせられると同時に興味をそそられます。例えば、194頁、409頁をご参照ください。
このように、読んでいて飽きさせない・先が読みたくなるような工夫が随所に散りばめられているため、早く読み通せるのです。
ニヤニヤしながら読んでいるといつの間にか、本格的な家族法の知識が身につく一冊です。
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