合格を目指すすべての人へ。アガルートは、応援のかたちも多彩です。 全12種の割引をチェック

戸別訪問禁止事件(最三小判昭和56.6.15)をどこよりも分かりやすく解説

当ページのリンクにはPRが含まれています。
×
判例図解キット

【法スタ限定】視覚的に判例を整理できる特製キットをプレゼント!!

※閉じるとこの案内は再表示されません

かもっち・あひるっぺからの挨拶

かもっち

はじめまして、かもっち@hosyocomです。
皆さん、法律の勉強、お疲れ様です!!

法スタは、法律を学ぶすべての人に向けた法律の勉強法専門メディアです。

あひるっぺ

私は、司法試験受験生のあひるっぺ

司法試験予備試験法科大学院入試法律書籍人気予備校のレビュー
必要なノウハウや勉強の進め方を、初心者にもわかりやすく解説
しています。

かもっち

姉妹サイトとして「法律書籍の口コミサイト」や「法科大学院の口コミサイト」も運営しています。
動画解説の「法スタチャンネル」も大好評、運営中!

▽動画解説を順次公開中▽

あひるっぺ

私たちは、合計370件以上の豊富なコンテンツを揃え、皆さんの法律学習を全力でサポートします。
知りたい情報が必ず見つかるはず!ぜひ一緒に学びましょう!

この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです!

(挨拶おわり)


司法試験・予備試験受験生へ

あひるっぺ

皆さん、知ってましたか?
あのアガルートがアプリをリリースしています。

かもっち

これにより講義視聴がより便利になり、学習の効率が大幅にアップしました!

是非、公式サイトで詳細を確認してください!

\講義動画のダウンロード可能/
データ通信料を気にせず受講しよう!!

上位ロー合格で【全額返金】嘘みたいな話

公職選挙法138条により選挙運動における戸別訪問は禁止されています。

しかし、選挙運動における戸別訪問を禁止することは、憲法21条が保障する表現の自由に対する制約になるので、違憲ではないかとの問題があります。

昭和56年6月15日の最高裁判決は、戸別訪問禁止規定を合憲とする理由を示した判決として注目されました。

目次

あひるっぺ

みなさ~ん!
この記事の本題に入る前に、ちょっと耳寄りな情報をご案内します。

かもっち

「これさえやりきれば、もう怖くない!
そんな演習書や問題集が欲しいと思ったことはありませんか?
通称「重問」と呼ばれるアガルートの重要問題がおすすめ

あひるっぺ

その人気の秘密や効果的な活用方法について、アガルートの専任講師に直接インタビューを行いました。
受験生に支持される理由が詰まった記事、ぜひチェックしてみてくださいね!

今売れてます!!

\司法試験合格者占有率37.8%/

▼重要問題だけで合格する究極の勉強法【独占インタビュー】▼


選挙運動における戸別訪問禁止とは?

憲法21条1項による表現の自由の一環として、選挙運動の自由も認められると解されています。

ただ、公職選挙法によって選挙運動については様々な制約が加えられています。

戸別訪問禁止事件で問題になっているのは、次の規定です。

公職選挙法
(戸別訪問)
第百三十八条 何人も、選挙に関し、投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて戸別訪問をすることができない。
2 いかなる方法をもつてするを問わず、選挙運動のため、戸別に、演説会の開催若しくは演説を行うことについて告知をする行為又は特定の候補者の氏名若しくは政党その他の政治団体の名称を言いあるく行為は、前項に規定する禁止行為に該当するものとみなす。

この規定は、選挙運動における戸別訪問を禁止する規定です。

1項で戸別訪問を直接的に禁止し、2項でその脱法行為を禁止しています。

戸別訪問が禁止されているのは、親しい人に戸別訪問されると、お願いされた候補者に投票しなければならない気持ちになってしまい、選挙人が公正な判断のもと投票ができなくなる恐れがあるためです。

また、外部からは分かりにくいため、金員のやり取りによる選挙買収が行われる恐れも大きいと言えます。

こうした趣旨により、選挙運動における戸別訪問が禁止されています。

戸別訪問禁止は憲法に違反していないのか?

戸別訪問禁止規定は違憲ではないのかという点は、度々、裁判で問題になっていました。

戸別訪問禁止規定は、1925年に普通選挙法が制定されて以来設けられていました。戦後、選挙運動の自由化が図られましたが、この規定は廃止されませんでした。

戸別訪問は候補者が選挙において自分の意見を表明する手段の一つで、これを禁止することは、表現の自由に対する制約になるため、憲法21条1項に違反するのではないかとの問題が生じます。

戸別訪問禁止規定が合憲か違憲かについては様々な学説がありますが、主な学説は次のとおりです。

  • 合憲説:戸別訪問禁止規定は合理的で必要やむをえない制限として合憲とする説。
  • 「明白かつ現在の危険」説:戸別訪問禁止規定は違憲ではないが、戸別訪問の自由を禁止し、その違反行為を処罰できるのは、戸別訪問により重大な害悪が不可避的に生じるという切迫した危険があり、それを制限する以外に害悪の発生を防止できない場合に限られるとする説。
  • 違憲説:戸別訪問の禁止は、合理性の認められる最小限度のものでなければならないが、戸別訪問禁止規定の理由等を検討すると合理性を有する基準とは言えないので違憲であると考える説。
  • 立法政策の問題とする説:戸別訪問の禁止は、合憲か違憲かの問題ではなく、立法政策の問題として考えるべきとする説。

戸別訪問禁止規定についての裁判所の考え方

戸別訪問禁止を合憲とする考え方は、昭和25年9月27日の大法廷判決で既に出されていました。

憲法21条は「絶対無制限の言論の自由を保障しているのではなく、公共の福祉のためにその時、所、方法等につき合理的制限のおのずから存する」との公共の福祉論のもと、戸別訪問禁止を合憲と判断していたのです。

その後、上記で紹介した様々な学説が展開されるようになり、地裁や高裁でも戸別訪問の禁止を違憲とする判決が出されるなど、はっきりしない状況が続いていました。

そこで、昭和56年6月15日に改めて、最高裁が判断を下したのが今回取り上げる判例です。

戸別訪問禁止事件の概要

昭和51年に行われた衆議院議員総選挙において、被告人Aらは、X候補者への投票を依頼すべく、戸別訪問を行っていました。その点について、公職選挙法138条1項の規定に違反しているとして起訴された事件です。

第一審は、被告人Aらの戸別訪問の事実を認定したうえで、「戸別訪問は財力のない一般国民にとってはなくてはならない選挙運動であるとして、むしろ推奨されなければならない」との認識から公職選挙法138条1項が憲法21条1項に違反し無効であるとの判決を下しました。

そのため、国が控訴しました。

第二審では、戸別訪問の禁止が「憲法上許される合理的で必要やむを得ない限度の規制であると考えることはできない」として、戸別訪問を一律に禁止していることは、憲法21条1項に違反するとの判断を下しました。

そこで国が上告しました。

最高裁の考え方

最高裁は、原判決を破棄し、差し戻しました。

つまり、最高裁は戸別訪問禁止規定を合憲とする判断を変えませんでした。

最高裁が戸別訪問禁止規定を合憲とした理由を見ていきましょう。

戸別訪問の禁止の目的

最高裁は、戸別訪問の禁止は、意見表明そのものの制約を目的としているわけではないと判断しました。

戸別訪問を禁止する理由は、

  • 戸別訪問が買収、利害誘導等の温床になり易く、選挙人の生活の平穏を害する。
  • 候補者側も戸別訪問のために多額の出費が必要になる。
  • 投票が情実に流され易くなる。

といった弊害があるためだとしています。

そして、この目的は正当であり、戸別訪問を一律に禁止することと禁止目的との間に合理的な関連性があるとしています。

戸別訪問の禁止により失われる利益と得られる利益の比較

その上で、最高裁は、戸別訪問の禁止により失われる利益と得られる利益を比較しています。

具体的には次のとおりです。

  • 失われる利益:戸別訪問という手段方法による意見表明の自由が制約される。
  • 得られる利益:戸別訪問の弊害を防止することにより選挙の自由と公正を確保できる。

そして、失われる利益については、戸別訪問の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎず、戸別訪問以外の手段方法による意見表明の自由は制約されていないとしています。

このように比較衡量論を持ち出したうえで、得られる利益の方が大きいと判断しました。

最高裁の結論

最高裁は、戸別訪問を一律に禁止している公職選挙法138条1項の規定は、合理的で必要やむをえない限度を超えるものとは認められず、憲法21条に違反しないと判断しました。

また、戸別訪問の一律禁止は、立法政策の問題であるから、国会がその裁量の範囲内で決定した政策は尊重されなければならないとも述べています。

伊藤正己裁判官の補足意見

この判決の後、 昭和56年7月21日にも、最高裁で戸別訪問禁止規定を合憲とする判決が出されました(最判 昭和56年7月21日 刑集 第35巻5号568頁)。

この中で、伊藤正己裁判官が述べた補足意見が注目されました。

戸別訪問禁止規定を合憲とする判決は、昭和25年9月27日の大法廷判決で既に出されていました。

それでも地裁や高裁で、戸別訪問禁止規定を違憲とする判決が出されていたのは、その理由の説得力が不十分だからではないかということで、伊藤裁判官が次のような補足意見を述べています。

  • 弊害防止論だけでは、戸別訪問禁止規定を合憲とする論拠としては不十分である。
  • 選挙運動は公正なルールの下で行われるべきであるが、そのルールの内容については、合理的とは考えられないような特段の事情のない限り、憲法47条により、国会に広い裁量が認められている。

よって、戸別訪問の禁止が妥当かどうかは立法政策の問題であり、憲法21条に違反するかどうかの問題にはならないということです。

判決文を読んでみよう!

余裕がある方は、判決文の抜粋を掲載しているので、実際に読んでみましょう!全文を読みたい方は、最高裁HPをチェック。

公職選挙法一三八条一項の規定が憲法二一条に違反するものでないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和四三年(あ)第二二六五号同四四年四月二三日大法廷判決・刑集二三巻四号二三五頁、なお、最高裁昭和二四年(れ)第二五九一号同二五年九月二七日大法廷判決・刑集四巻九号一七九九頁参照)とするところである。

戸別訪問の禁止は、意見表明そのものの制約を目的とするものではなく、意見表明の手段方法のもたらす弊害、すなわち、戸別訪問が買収、利害誘導等の温床になり易く、選挙人の生活の平穏を害するほか、これが放任されれば、候補者側も訪問回数等を競う煩に耐えられなくなるうえに多額の出費を余儀なくされ、投票も情実に支配され易くなるなどの弊害を防止し、もつて選挙の自由と公正を確保することを目的としているところ(最高裁昭和四二年(あ)第一四六四号同四二年一一月二一日第三小法廷判決・刑集二一巻九号一二四五頁、同四三年(あ)第五六号同四三年一一月一日第二小法廷判決・刑集二二巻一二号一三一九頁参照)、右の目的は正当であり、それらの弊害を総体としてみるときには、戸別訪問を一律に禁止することと禁止目的との間に合理的な関連性があるということができる。そして、戸別訪問の禁止によつて失われる利益は、それにより戸別訪問という手段方法による意見表明の自由が制約されることではあるが、それは、もとより戸別訪問以外の手段方法による意見表明の自由を制約するものではなく、単に手段方法の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎない反面、禁止により得られる利益は、戸別訪問という手段方法のもたらす弊害を防止することによる選挙の自由と公正の確保であるから、得られる利益は失われる利益に比してはるかに大きいということができる。

以上によれば、戸別訪問を一律に禁止している公職選挙法一三八条一項の規定は、合理的で必要やむをえない限度を超えるものとは認められず、憲法二一条に違反するものではない。したがつて、戸別訪問を一律に禁止するかどうかは、専ら選挙の自由と公正を確保する見地からする立法政策の問題であつて、国会がその裁量の範囲内で決定した政策は尊重されなければならないのである。このように解することは、意見表明の手段方法を制限する立法について憲法二一条との適合性に関する判断を示したその後の判例(最高裁昭和四四年(あ)第一五〇一号同四九年一一月六日大法廷判決・刑集二八巻九号三九三頁)の趣旨にそうところであり、前記昭和四四年四月二三日の大法廷判例は今日においてもなお維持されるべきである。

まとめ

最高裁は、選挙運動における戸別訪問を禁止する規定について、比較衡量論を持ち出したうえで合憲と判断しました。

そして、戸別訪問の禁止が妥当かどうかは立法政策の問題に過ぎないということです。

この最高裁判決以降、戸別訪問禁止規定は合憲と解釈する流れが定まりました。

最高裁が戸別訪問禁止規定を合憲した理由を押さえておきましょう。

▼参考文献▼

憲法判例百選2(第三版) 有斐閣

\アガルートの三種の神器/

スクロールできます
総合講義重要問題習得講座論証集の使い方講座
インプット講座の最高傑作
司法試験の論文式試験に必要な知識が凝縮された質の高いテキストを使った業界最高峰の講義です。
「もう論文式試験は怖くない」これだけやりきれば、そう思える講座というコンセプトで作られた演習講座アガルートの講座の中で、最もコスパのよい講座です。隙間時間の聞き流しが最適。論点のハンドブックとしても使える。
講座レビュー講座レビュー講座レビュー
詳細はこちら詳細はこちら詳細はこちら
セール情報セール情報セール情報
アガルートの三種の神器

司法試験は情報戦だ!!

司法試験の論文式試験対策についてもっと詳しく知りたい方は、「論文で半分ちょい」が合格のカギ!司法試験の合格ストラテジー【初学者向け】もぜひチェックしてみてください。

この記事では、司法試験の論文式試験で「目指すべき得点」や、効果的な勉強法について詳しく解説しています。特に、初学者でも理解しやすいように工夫されていますので、これから司法試験を目指す方には必見です。

この記事の内容はこんな方におすすめ!

  • 司法試験の論文式試験と短答式試験の配点のバランスを知りたい
  • 論文式試験で効率よく得点するための勉強法を探している
  • 初学者におすすめの参考書や予備校の選び方を知りたい
  • 「予備試験ルート」と「ロースクールルート」の違いが分からない
  • 過去問や再現答案の効果的な活用方法を知りたい

この記事で分かること

  • 司法試験の論文式試験で狙うべき得点の目安
  • 短答式試験の対策は「合格点を確実に取る」ことがポイント
  • おすすめの判例集や演習書、予備校講座の紹介
  • 予備試験ルートとロースクールルートのメリットとデメリット
  • 効率よく学習を進めるための勉強法とスケジュール

詳しくは以下の記事をご覧ください!司法試験合格への道がぐっと近づくはずです。

▼司法試験受験生なら必読▼

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

判例学習を“見える化”しよう!

事案図解で理解と記憶に革命を。

複雑な判例も、図で整理すれば驚くほどスッキリ頭に入る。
判例事案図解キット」は、登場人物・組織を示す「人・組織アイコン」と、事案の流れを補足する「その他アイコン」がセットになった、スライド形式の図解ツールです。

これらのアイコンを組み合わせて配置するだけで、判例の構造を視覚的に整理・再現することが可能。
もちろん、手書きの整理も有効ですが、スライドとして一度しっかり図解しておけば、後から見返したときの理解度と復習効率が段違いです。

とくに「これは絶対に押さえておきたい!」という重要判例については、このキットを活用して、自分だけのオリジナル事案図を作ってみてください。

「視覚で学ぶ」という新しい判例学習のかたち、ぜひ体験してみてください。

▼法スタ公式LINE登録で限定配布中▼


この記事を書いた人

法スタ運営事務局です。司法試験合格者監修の下、法律を勉強されているすべての方向けにコンテンツの制作をしております。

法律書籍専門の口コミサイト「法書ログ」、法科大学院の口コミサイト「#ロースクールはいいぞ」を運営しております。

目次