『森林法違憲判決の判断枠組みは?』
『森林法違憲判決は規制目的2分論を採用したのか』
『民法判例として理解すべきポイントは?』
森林法違憲判決は、従来の規制目的2分論では説明できない異色の判例として注目されました。
最高裁は、問題となった森林法186条の規定を「積極目的規制」と解しながら、「厳格な合理性の基準」を用いて違憲の判断を下したのです。
法書ログでは、憲法の重要判例を解説しています。
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目次
財産権に対する規制目的2分論とは
憲法29条2項によれば、財産権は公共の福祉による制約を受けるとされています。
制約の内容は、憲法22条の職業選択の自由における公共の福祉による制約で用いられている規制目的2分論と同じ内容になります。
憲法29条2項の公共の福祉による制約は、
消極目的規制、消極的・警察的規制
積極目的規制、積極的・政策的規制
の2種類に分類できるとする考え方です。
消極目的規制、消極的・警察的規制とは
国民の生命、健康等に対する危害を防止するための規制です。
具体的には、感染症法、食品衛生法、建築基準法、消防法、盛土規制法などが代表例です。
消極目的規制の立法が合憲かどうかは、立法目的の重要性、立法目的達成手段と立法目的が実質的な関連性を有するかどうかという「厳格な合理性の基準」を用いて判断します。
積極目的規制、積極的・政策的規制とは
社会的、経済的弱者を保護するための規制です。
具体的には、独占禁止法、借地借家法、破産法などが代表例です。
積極目的規制の立法が合憲かどうかは、当該規制措置が著しく不合理であることが明白であるかどうかという「明白性の原則」を用いて判断します。
森林法違憲判決事件の概要
▼当時の法制度▼
民法256条1項には、「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。」と規定されています。この規定により、例えば、土地の共有者は、持分に関係なく、いつでも、共有物分割請求をすることができ、その結果として、一筆の土地を分割(分筆)することも認められています。
土地を共有する状態は、相続をきっかけとして発生することが多いですが、共有者同士の関係が良好な場合は問題ないにしても、いったん険悪な関係になってしまうと、共有物の管理がうまくいかなくなります。
そこで、共有状態を解消するために、各共有者による共有物分割請求が認められているわけです。
ところが、昭和62年以前の森林法186条では、共有森林につき持分価額2分の1以下の共有者(持分価額の合計が2分の1以下の複数の共有者を含む。)については、この分割請求権の行使が認められていませんでした。
▼森林法違憲判決の事案の概要▼
原告Xと被告Yは兄弟です。森林を2分の1ずつ、父から生前贈与されて、共有していましたが、森林経営を巡って意見が対立したことから、Xは民法256条1項に基づく共有物分割を請求しましたが、森林法186条により、共有物分割請求権の行使が認められませんでした。
そこで、Xが森林法186条は、憲法29条で認められている財産権の行使を不当に妨げるものであるとして、違憲を主張するとともに、民法256条1項に基づく共有物分割を求めて提訴しました。
【地裁と高裁はいずれも、森林法186条の規定を合憲と解釈】し、Xによる共有物分割請求を棄却しました。
そこでXが最高裁に上告しました。
最高裁の考え方
規制目的2分論でこの事件を考える場合は、森林法186条による規制が、消極目的規制と積極目的規制のどちらに該当するのかを判断したうえで、消極目的規制なら厳格な合理性の基準、積極目的規制なら明白性の原則により、合憲か違憲かを判断します。
ところが、森林法違憲判決事件では、最高裁はこのパターンで判断しませんでした。
憲法29条2項について
まず、最高裁は、「財産権に対する規制は、社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策上の積極的なものから、社会生活における安全の保障や秩序の維持等の消極的なものに至るまで多岐にわたる。」として、財産権に対する規制は、消極目的規制と積極目的規制のいずれもありうると述べています。
そのうえで合憲性の判断については、次のようなロジックを示しています。
▼森林法違憲判決の合憲性判断の基本的なロジック▼
①憲法29条=私有財産制を保障し、個々の財産権も保障する
↓
②規制目的は積極的から消極まで種々様々
↓
③財産権に対する規制が憲法29条2項の公共の福祉に適合するかどうかは、規制の目的、必要性、内容、その規制によつて制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して決すべきである。
↓
④ただ、裁判所は、立法府がした比較考量に基づく判断を尊重すべきである。=立法府の裁量
↓
⑤そこで、裁判所が憲法29条2項に違反すると判断するのは次のいずれかの場合に限る。
・立法の規制目的が社会的理由ないし目的に出たとはいえないものとして公共の福祉に合致しないことが明らかである場合。
・規制目的が公共の福祉に合致する場合でも規制手段が目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが明らかであつて、そのため立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えるものとなる場合。
最高裁のロジックの流れは理解し、答案で再現できるようしておくといいぞ!
民法256条の共有物分割請求権の性質
最高裁は、民法256条の共有物分割請求権は、「各共有者に近代市民社会における原則的所有形態である単独所有への移行を可能とする制度である。」と認定し、この分割請求権を制約することは、憲法上、財産権の制約に該当するので、この制約を設ける立法は、憲法29条2項にいう公共の福祉に適合することを要すると述べています。
最高裁は、安易に「民法上の分割請求権を否定するものであるから、財産権に対する制約を認定した」わけではないぞ!
財産権に対する制約を認定する際は、例えば以下のように、相応の説明が必要だろう。
『個々の財産権を具体化する法律は、公共の福祉に適合するような合理的なものでなければならない。したがって、合理的な法制度形成によらずに具体化された規制は財産権に対する制約に該当する』
森林法186条の目的
最高裁は、森林法186条の目的は、「森林の細分化を防止することによつて森林経営の安定を図り、ひいては森林の保続培養と森林の生産力の増進を図り、もつて国民経済の発展に資することにあると解すべきである。」と解しています。
規制目的2分論の分類でいえば、どちらかというと、積極目的規制であると解しているわけです。
積極目的規制ならば、森林法186条の合憲性は、当該規制措置が著しく不合理であることが明白であるかどうかという「明白性の原則」により判断することになるはずです。
ところが、最高裁は、次のように判断しています。
森林法186条の違憲性判断
まず、森林法186条による共有物分割請求権の制約は、「立法目的達成のための手段として合理性又は必要性に欠けることが明らかである」場合は違憲となるとしたうえで、次のように判断しています。
最高裁は、「規制手段の合理性」と「規制手段の必要性」のいずれも立法事実に踏み込んで審査している!
審査密度は高いと考えられている。
◆規制手段の合理性
次の理由からして、森林法186条の立法目的と同条が共有森林につき持分価額2分の1以下の共有者に分割請求権を否定したこととの間に合理的関連性はない。
・森林の共有により、当然に、その共有者間に森林経営のための目的的団体が形成されることになるわけではなく、また、共有者が当該森林の経営につき相互に協力すべき権利義務を負うに至るものではない。
・共有森林の管理又は変更について、共有者間に対立が生じた場合は、保存行為しかできないため、民法256条の共有物分割により解消するための手段が必要である。森林法186条による共有物分割請求権の制約は、このような事態の永続化を招くだけで、森林の経営の安定化に資することにはならない。
◆規制手段の必要性
次の理由からして、森林法186条は、共有森林につき持分価額2分の1以下の共有者に一律に分割請求権を否定しているのは、同条の立法目的を達成するについて必要な限度を超えた不必要な規制である
・森林の単独所有者が森林を細分化して第三者に譲渡することや、共有森林についても現物分割、過半数の共有者(持分価格2分の1超の共有者も含む)による分割請求、遺産分割は認められている。持分価額2分の1以下の共有者による分割請求の場合だけ禁止しなければならない社会的必要性が強く存すると認めるべき根拠はない。
・共有森林を現物分割をしても直ちにその細分化を来すものとはいえないし、競売による代金分割により一括競売がされるときは、当該共有森林の細分化という結果は生じない。
注目したいことは、最高裁が、「立法目的」にも踏み込んで判断している点です。
これは、消極目的規制の立法が合憲かどうか判断する際の「厳格な合理性の基準」と同じ考え方になります。
つまり、森林法186条を「積極目的規制」と解しながら、合憲性の判断基準としては、立法目的にも踏み込み、「厳格な合理性の基準」を用いている点で異色の判例として注目されたわけです。
森林法違憲判決(最高裁)の結論
最高裁の結論は次の通りです。
▼森林法違憲判決の結論▼
・森林法186条が共有森林につき持分価額2分の1以下の共有者に民法256条1項所定の分割請求権を否定しているのは、森林法186条の立法目的との関係において、合理性と必要性のいずれをも肯定することのできないことが明らかであつて、この点に関する立法府の判断は、その合理的裁量の範囲を超えるものであるといわなければならない。
・よって、憲法29条2項に違反し、無効である。
・共有森林につき持分価額2分の1以下の共有者についても民法256条1項本文の適用がある。
最高裁は、森林法186条が違憲であるという法令違憲の判断を下しました。
法令違憲の判断を下したのは、戦後5件目で、財産権規制に関するものとしては初の違憲判決でした。
判決後、森林法は速やかに改正されて、186条が削除されています。
森林法違憲判決は「戦後5件目!」
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学会の反応
森林法違憲判決で、従来の規制目的2分論を採用しなかった点については、学界でも様々な議論が展開されました。
・事案が特殊だったために規制目的2分論によらなかったとする説
・財産権の規制内容は多様だから規制目的2分論に限られないとする説
・規制目的2分論自体を軌道修正したものだと解する説
などが提唱されています。
司法試験対策としては、学界における議論まで踏み込む必要はありませんが、規制目的2分論によらない異色の判例だった点は押さえておきましょう。
森林法違憲判決と民法判例
森林法違憲判決は、民法258条の現物分割の具体的な方法について示した判例としても知られています。
現物分割の方法として、
・持分の価格以上の現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせ、過不足の調整をすること。
・分割の対象となる共有物が多数の不動産である場合に、一括して分割の対象としてうえで、分割後のそれぞれの部分を各共有者の単独所有とすること。
・共有者が多数である場合、その中の一人についてのみ持分の限度で現物を分割し、その余は他の者の共有として残すこと。
これらのいずれも認められるとの判断を下しました。
民法判例としても重要なので合わせて押さえておきましょう。
◆参考文献
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多数の問題演習を通じて、論述レベルを合格レベルに引き上げる。
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