高輪グリーンマンション殺人事件の基本的理解と論述のポイント【任意取調と宿泊】

司法試験受験生、予備試験受験生の皆様、お疲れ様です。

本日は、刑事訴訟法の重要判例である「高輪グリーンマンション殺人事件」について解説させて頂きます。

高輪グリーンマンション事件といえば、宿泊を伴う任意取り調べが問題となった著名な判例です。

高輪グリーンマンション殺人事件の判決

それでは、高輪グリーンマンション殺人事件の判決を見ていきましょう。重要と考えられる点は、太字等にしております。

「任意捜査においては、強制手段、すなわち、「個人の意思を抑圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段」(最高裁昭和五〇年(あ)第一四六号同五一年三月一六日第三小法廷決定・刑集三〇巻二号一八七頁参照)を用いることが許されないということはいうまでもないが、任意捜査の一環としての被疑者に対する取調べは、右のような強制手段によることができないというだけでなく、さらに、事案の性質、被疑者に対する容疑の程度、被疑者の態度等諸般の事情を勘案して、社会通念上相当と認められる方法ないし様態及び限度において、許容されるものと解すべきである。

3 これを本件についてみるに、まず、被告人に対する当初の任意同行については、捜査の進展状況からみて被告人に対する容疑が強まつており、事案の性質、重大性等にもかんがみると、祖の段階で直接被告人から事情を聴き弁解を徴する必要性があつたことは明らかであり、任意同行の手段・方法等の点において相当性を欠くところがあつたものとは認め難く、また、右任意動向に引き続くその後の被告人に対する取調べ自体については、その際に暴行、脅迫等被告人の供述の任意性に影響を及ぼすべき事跡があつたものとは認め難い。

 4 しかし、被告人を四夜にわたり捜査官の手配した宿泊施設に宿泊させた上、前後五日間にわたつて被疑者としての取調べを続行した点については、原判事のように、右の間被告人が単に「警察の庇護ないしは緩やかな監視のもとに置かれていたものと見ることができる」というような状況にあつたにすぎないものといえるか、疑問の余地がある。
 すなわち、被告人を右のように宿泊させたことについては、被告人の住居たるB荘は高輪警察署からさほど遠くはなく、深夜であつても帰宅できない特段の事情も見当たらない上、第一日目の夜は、捜査官が同宿し被告人の挙動を直接監視し、第二日目以降も、捜査官らが前記ホテルに同宿こそしなかつたもののその周辺に張り込んで被告人の動静を監視しており、高輪警察署との往復には、警察の自動車が使用され、捜査官が同乗して送り迎えがなされているほか、最初の三晩については警察において宿泊費用を支払つており、しかもこの間午前中から深夜に至るまでの長時間、連日にわたつて本件についての追及、取調べが続けられたものであつて、これらの諸事情に徴すると、被告人は、捜査官の意向にそうように、右のような宿泊を伴う連日にわたる長時間の取調べに応じざるを得ない状況に置かれていたものとみられる一面もあり、その期間も長く任意取調べの方法として必ずしも妥当なものであつたとはいい難い
 しかしながら、他面、被告人は、右初日の宿泊については前記のような答申書を差し出しており、また、記録上、右の間に被告人が取調べや宿泊を拒否し、調べ室あるいは宿泊施設から退去し帰宅することを申し出たり、そのような行動に出た証跡はなく、捜査官らが、取調べを強行し、被告人の退去、帰宅を拒絶したり制止したというような事実も窺われないのであつて、これらの諸事情を総合すると、右取調べにせよ宿泊にせよ、結局、被告人がその意思によりこれを容認し応じていたものと認められるのである。

 5 被告人に対する右のような取調べは、宿泊の点など任意捜査の方法として必ずしも妥当とはいい難いところがあるものの、被告人が任意に応じていたものと認められるばかりでなく、事案の性質上、速やかに被告人から詳細な事情及び弁解を聴取する必要性があつたものと認められることなどの本件における具体的状況を総合すると、結局、社会通念上やむを得なかつたものというべく、任意捜査として許容される限界を越えた違法なものであつたとまでは断じ難いというべきである。」

高輪グリーンマンション殺人事件の基本的理解と論述のポイント

規範部分のポイント

まずは、高輪グリーンマンション事件の規範部分を確認してみましょう。

「任意捜査の一環としての被疑者に対する取調べは、・・・事案の性質、被疑者に対する容疑の程度、被疑者の態度等諸般の事情を勘案して、社会通念上相当と認められる方法ないし様態及び限度において、許容されるものと解すべきである」

黄色マーカー部分は、そのまま論述できるように論証として暗記すべき点です。その中でも、同判決があえて指摘している事情、①事案の性質②被疑者に対する容疑の程度③被疑者の態度の暗記はマストです。

あてはめ部分のポイント

【宿泊を伴う任意取調の限界】の論点は、捜査の重要な論点であり、規範を押さえている方も多いと思います。しかし、特に捜査の論点は、規範をおさえているだけでは不十分であり、判例がその規範をどのようにあてはめをしたのか。つまり、判例のあてはめを理解することが非常に重要となります。

判例のあてはめを理解するために、あてはめで評価されている事情をプラスの事情とマイナスの事情に分けて、整理することをお勧めいたします。これは、他の科目にも共通することです。そして、整理ができたら、さらに、その事情の中でも、判例が重視している事情には、別途しるしをつける等して押させるようにしておきましょう。

▽主な事情を分類した例▽

取り調べを違法とする方向に働く事情取り調べを適法とする方向に働く事情
深夜であつても帰宅できない特段の事情も見当たらない・容疑が強まっていた
・周辺に張り込んで被告人の動静を監視・殺人事件であり、事案が重大であった
警察の自動車が使用され、捜査官が同乗して送り迎えがなされてい・宿泊については前記のような答申書を差し出していた
・最初の三晩については警察において宿泊費用を支払つて・右の間に被告人が取調べや宿泊を拒否し、調べ室あるいは宿泊施設から退去し帰宅することを申し出たり、そのような行動に出た証跡はない
・間午前中から深夜に至るまでの長時間、連日にわたつて本件についての追及、取調べが続けられた

さらに、本判決のあてはめの流れも非常に大切です。

本判決は、まず、「容疑が強まつており、事案の性質、重大性等にもかんがみると、祖の段階で直接被告人から事情を聴き弁解を徴する必要性があつた」として、①事案の重大性及び②容疑の程度について認定しております。

そのうえで、宿泊を伴う取り調べについて、その方法を具体的に指摘し、「任意取調べの方法として必ずしも妥当なものであつたとはいい難い」と認定しています。したがって、本判決は、取り調べの具体的な方法としては、「妥当なものではあったとはいいがたい」と評価しています。

他方で、本判決は、結論としては、適法な取り調べと認定しております。取り調べの方法としては、「妥当とはいいがたい」と認定しながら、どのように適法と結論付けたのでしょうか。

それは、被疑者の態度です。本判決は、被告の態度に鑑みて、「被告人がその意思によりこれを容認し応じていた」と評価し、最終的に適法と結論付けています。つまり、被疑者が仮に宿泊を伴う取り調べに抵抗を示しいていた場合には、同様の取り調べであっても、違法という結論になっていた可能性もあると考えられます。

高輪グリーンマンション事件の論述のポイント

論述の流れ及び留意点は次のとおりです。

①強制処分の判断枠組

②強制処分に該当するかの検討

③高和グリーンマンション事件の規範部分を論証

※見解にもよるかもしれませんが、比例原則の考えが根本にあるため、「被疑者の行動の自由」を制約することを前提にした論述になるかと考えられます。

論証例

強制処分に該当しないとしても、宿泊を伴う任意取り調べは、被疑者の行動の自由を制約することから、比例原則が適用され、①事案の性質、②容疑の程度、③被疑者の態度などを考慮して、社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において、任意捜査として、許容されると解すべきである(刑訴法198条1項)。

※あくまでも参考例であり、論証の正確性等を保証できるものではありません。

④事案の性質、容疑の程度を評価

※被疑罪名、被害結果などを考慮して、事案の性質を評価する。

※容疑の程度、それまでの捜査結果を踏まえて具体的に評価する。

⑤取り調べの方法を評価

※「事案が軽微」「容疑が弱い」場合に、本判決と同程度又はそれ以上の取り調べを行った場合、被疑者の態度にかかわらず、違法と評価される可能性がある点は留意が必要です。

⑥被疑者の態度を評価

※積極的に応じていたのか、不承不承応じていたのか、明確に拒絶していのか等を具体的な事情に基づいて評価

最後に

今回は、刑事訴訟法の重要判例である「高輪グリーンマンション殺人事件」の基本的な理解と論述のポイントを解説してみました。

あくまでも基本的事項の解説となりますので、より正確により深く理解したい方は、下記書籍などをご参照をお願い致します

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