本記事は、これから法科大学院(ロースクール)に入学する新入生に対し、ロースクールでの1週間の生活を紹介し、具体的なイメージを持ってもらうことを目的としています。
あらかじめロー生活をイメージすることで入学してから慌てることが少しでも減ったら嬉しいです。
<編集部コメント>
法科大学院に進学され、司法試験に合格された方に執筆をして頂きました。ロースクールでのリアルな1週間のスケジュールや、予習・復習の工夫、忙しい中でも効率よく勉強を進めるためのコツまで、これから法科大学院に入学される方や在学中の方にとって役立つ情報が満載です。実際に経験したからこそ語れる、具体的で実践的なアドバイスをぜひ参考にしてください。
目次
法科大学院生の1週間の生活
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
| 8:00 起床・準備 | 8:00 起床・準備 | 8:00 起床準備 | | 8:00 起床準備 | |
9:00 起床・準備 | 9:00~10:30 授業(民訴) | 9:00~10:30 授業(民法) | 9:00~10:30 授業(刑訴) | 9:00 起床・準備 | 9:00~13:00 弁ゼミ | 10:00 起床・準備 |
10:00~12:00 予習(民法) | 10:30~12:00 予習(民法) | 10:30~12:00 予習(商法) | 10:30~12:00 予習(憲法) | 10:00~12:00 問題演習 | 11:00~12:00 予習(経済法) |
12:00~13:00 昼食 | 12:00~13:00 昼食 | 12:00~13:00 昼食 | 12:00~13:00 昼食 | 12:00~13:00 昼食 | 12:00~13:00 昼食 |
13:00~14:30 授業 (リーガルリサーチ) | 13:00~14:00 予習 (法曹倫理) | 13:00~14:30 授業(商法) | 13:00~14:30 予習(憲法) | 13:00~16:10 予習(行政法) | 13:00~14:00 昼食 | 13:00~16:00 予習(経済法) |
14:30~15:30 復習(民訴) | 14:00~16:00 予習(民法) | 14:30~16:10 予習(経済法) | 14:40~16:10 授業(憲法) | 14:00~15:30 予習(民訴) |
15:30~18:00 復習(民法商法) | 16:00~18:00 復習(行政法) | 16:20~19:30 授業(経済法) | 16:10~18:00 復習(憲法) | 16:20~17:50 授業(行政法) | 15:30~18:00 予習 (リーガルリサーチ) | 16:00~17:00 予習(刑訴) |
18:00~19:00 間食・休憩 | 18:00~19:30 授業 (法曹倫理) | 18:00~19:00 間食・休憩 | 18:00~19:00 間食・休憩 | 19:00~22:00 予習(民法商法) | 17:00~18:00 間食・休憩 |
19:00~21:00 復習(刑訴) | 19:30~20:00 間食 | 19:30~20:00 間食 | 19:00~22:00 問題演習 | 19:00~22:00 予習(弁ゼミ) | 18:00~21:00 刑訴(予習) |
21:00~22:00 問題演習 | 20:00~22:00 復習(商法) | 20:00~22:00 予習(刑訴) | 22:00~ 帰宅・夕食等 | 21:00~ 帰宅・夕食等 |
22:00~ 帰宅・夕食等 | 22:00~ 帰宅・夕食等 | 22:00~ 帰宅・夕食等 | 22:00~ 帰宅・夕食等 | 22:00~ 帰宅・夕食等 |
24:00 就寝 | 24:00 就寝 | 24:00 就寝 | 24:00 就寝 | 24:00 就寝 | 24:00 就寝 | 24:00 就寝 |
これが一番多かった既習1年次前期の生活です。
一週間に正課授業が10コマ、それとは別に弁護士ゼミがありました。
弁護士ゼミとは、司法試験を合格した実務家から司法試験の添削・解説を受けられるゼミです。ここでは答案の書き方も学ぶことができるため、読み手に伝わる表現等、授業では習わない部分もフォローできます。私のゼミでは毎週指定された過去問1題を扱いました。
生活リズムは大きく崩さないように心がけていましたが、一週間のほとんどが予習と授業で消えていました。
基本的に、夜10時までは図書館が開いていたので、午後10時までは学校で勉強をし、そのあとは家に帰って寝るような生活をしていました。自習室は午前0時半まで開いていましたので、午後10時以降も勉強している人も何人かいました。
昼食はローの友達と一緒に食べ、予習で分からなかったところについて話し合ったりしていました。ローの授業でグループワーク等がありますので、そこで交友関係を築くことができます。
当然のことですが、ロー入学後は、ロー受験期と同等かそれ以上に法律の勉強をすることになります。そして、予習がその多くを占めます。
次に、その予習について話そうと思います。
法科大学院の講義の予習について
(1)予習のパターンは3パターンある
ロー生活を通して、授業の予習には3パターンがあると感じました。
1つ目は、問いに対する回答を用意するパターンです。これは問いが提示されているため、それに対する回答を用意するタイプです。問題文と問いが提示される問題演習型もここに当たります。
2つ目は、判例の理解を問うパターンです。これは、最高裁判例や判決(以下、「判例等」といいます。)を読んで事案の概要と判旨について理解しておくタイプです。予習の際には判決文を正確に読む必要があるほか、判例評釈や調査官解説も読むことが多いです。
3つ目は、学説の理解を問うパターンです。これは、ある問いに対して、A説B説でどのような違いがあるかを押さえるタイプです。予習の際には数冊の基本書を読む必要があります。
(2)実際の予習
これが実際のローの予習の一部です(科目は刑事訴訟法)。
東京高判昭和63年4月1日【山谷テレビカメラ監視事件】が定立した規範と当てはめを説明せよ。
最決平成20年4月15日【京都ビデオ撮影ゴミ領地事件】が定立した規範と事案への当てはめを説明せよ。
最決平成2年6月27日【令状外写真撮影事件】は写真撮影の法的性質についてどのように説明しているか。補足意見も踏まえて説明せよ。
最決平成21年9月28日【エックス線照射事件】は写真撮影の法的性質についてどのように考えているか。説明せよ。
以上の判例から、判例の考える写真撮影の法的性質、写真撮影についての許容限界について定立された規範をまとめよ。
見てもらった通り、ロースクールの予習で一番多かったのは判例型でした。1回の講義で少なくとも3つほど、行政法や刑訴では10個近くの判例等を読んで理解することが必要でした。講義によっては第1審から読むことも求められます。
また、問題演習型でも判例を踏まえて書く必要があります。その意味では、問題演習型でも判例の理解は問われているといえます。
判例を一からすべて読んだことのある方なら身に染みてわかると思いますが、判例を隅々まで理解しながら読むのはとても時間がかかります。
学説の理解を問うパターンは、学問上の理解を深める上では必要ですが、司法試験の問題を解く上での優先度は高くないです。そのうえ、質問に答えられたかの確証がもてないことが多いです。
全ての設問に完璧に答えようとすると際限がありません。一科目だけならまだしも、一週間で複数の科目を同時に行わなければならないので、いくら時間があっても足りません。
上で見てもらった私の一週間は、予習にかなりこだわったものになってしまっています。
そのため、司法試験合格に向けた勉強というよりも、授業を受けるための勉強となってしまっていました。
(3) 理想的なスケジュール
今から示すのは、もう一度ローに通うことを念頭においたスケジュールです。
当然、ローによって予習量等は異なりますので、一意見として留めておいてください。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
| 8:00 起床・準備 | 8:00 起床・準備 | 8:00 起床・準備 | | 8:00 起床・準備 | |
9:00 起床・準備 | 9:00~10:30 授業 | 9:00~10:30 授業 | 9:00~10:30 授業 | 9:00 起床・準備 | 9:00~13:00 弁ゼミ | 10:00 起床・準備 |
10:00~12:00 予習(憲法) | 10:40~12:00 復習・演習 | 10:40~12:00 復習・演習 | 10:40~12:00 復習・演習 | 10:00~12:00問題演習 | 11:00~12:00 予習(経済法) |
12:00~13:00 昼食 | 12:00~13:00 昼食 | 12:00~13:00 昼食 | 12:00~13:00 昼食 | 12:00~13:00 昼食 | 12:00~13:00 昼食 |
13:00~14:30 授業 | 13:00~18:00 予習(予備) 問題演習 | 13:00~14:30 授業 | 13:00~14:30 問題演習 | 13:00~16:10 予習(行政法) | 13:00~14:00 昼食 | 13:00~14:00 予習(経済法) |
14:40~18:00 予習(予備) 問題演習 | 14:40~16:10 復習・演習 | 14:40~16:10 授業 | 14:00~15:30 予習(民訴) | 14:00~16:00 予習(刑訴法) |
18:00~19:30 授業 | 16:20~19:30 授業 | 16:20~18:00 復習・演習 | 16:20~17:50 授業 | 15:30~17:00 予習 (リーガルリサーチ) | 16:00~18:00 予習(民法) |
18:00~19:00 間食・休憩 | 19:30~20:00 間食・休憩 | 19:30~20:00 間食・休憩 | 18:00~19:00 間食・休憩 | 18:00~19:00 間食・休憩 | 17:00~18:00 間食・休憩 | 18:00~19:00 間食・休憩 |
19:00~22:00 問題演習 | 20:00~22:00 問題演習 | 20:00~22:00 復習・演習 | 19:00~22:00 予習(弁ゼミ) | 19:00~22:00復習・演習 | 19:00~22:00 問題演習 | 19:00~21:00 予習(商法) |
22:00~ 帰宅・夕食 | 22:00~ 帰宅・夕食 | 22:00~ 帰宅・夕食 | 22:00~ 帰宅・夕食 | 22:00~ 帰宅・夕食 | 22:00~ 帰宅・夕食等 | 21:00~ 帰宅・夕食等 |
24:00 就寝 | 24:00 就寝 | 24:00 就寝 | 24:00 就寝 | 24:00 就寝 | 24:00 就寝 | 24:00 就寝 |
まず一番心がけることは、予習に時間制限を設け、予習のしすぎを防ぐことです。
一科目の予習にかける最大時間を2時間にします。これだと、到底予習が終わらないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、それでよいと思います。
授業は分からない箇所を学ぶためにあります。そのため、予習段階では分からない点を炙り出しておくだけでも十分意味があると思います。また、パッと見て検討がつかない問題は、文献を正確に調べることも難しいことが多いので、予習を追究しすぎると、時間がかかることが多いです。
当然、運悪くソクラテスで当たることもあります。その時は、「分かりませんでした」と言って大丈夫です。「分かりません」と言うのは抵抗があるかもしれません。それで成績が下がったらどうしようと思うかもしれません。しかし、成績の大部分は定期試験で付けられますので、授業の時に分からなくても、定期試験の時に分かっていれば十分です。
予習で浮いた時間は、復習と問題演習に充てます。
復習としては、①定義の復習、②講義内容の復習、③演習書を用いた該当単元の演習を行ってました。司法試験は問題演習型なので、判例の理解を答案に落とし込めることを目的にした復習も必要です。
さいごに
新しい環境になり意気込む人も多いと思いますが、4月いっぱいを費やしても良いのでローの生活に慣れるところから始めてほしいです。最初から飛ばしすぎて、ゴールデンウィーク辺りでガス欠になっていく人が多いイメージです。
ロー生活を実際に経験してみて、どのような勉強スタイルが合うか探し、司法試験合格まで頑張り続けられるスタイルを確立させるところから頑張ってください。
また、法改正や担当教員の変更がない限り、ローで扱う教材は大きく変更されません。そのため、先輩が持っている過年度のレジュメ等を入手できれば予習の負担は段違いに軽くなります。今はSNSをやっている先輩も多いので、入学前からコンタクトを取ることもオススメです。
ローでの2年間ないし3年間はあっという間です。能動的な勉強を心がけて頑張ってください。