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【第三者の介在と因果関係】最高裁平成4年12月17日決定に学ぶ相当因果関係の限界

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刑法における「因果関係」は、実行行為と結果をつなぐ重要な要件です。
しかし、行為者以外の第三者の介在や、被害者自身の不適切な行動が結果に影響した場合、それでもなお因果関係を肯定できるのでしょうか?

最高裁平成4年12月17日決定は、この問題に正面から向き合った重要判例です。
スキューバダイビングの講習中に受講生が溺死した事故において、講習を担当していた指導者の過失と被害者死亡との間に因果関係が認められるのかが争点となりました。

この決定は、「行為に含まれていた危険が現実化した」と評価することで因果関係を肯定し、業務上過失致死罪の成立を認めています。
本記事では、本判例の意義を丁寧に解説しつつ、「介在事情」の処理を、司法試験論文でどう論じるかを明らかにしていきます。

目次

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最高裁平成4年12月17日決定における事案の概要

実行行為と結果との間に因果関係があるのかが問題となった事案として、最高裁判所第一小法廷平成4年12月17日決定(以下「本判例」と言います。)があります。

本判例の事案は、スキューバダイビングの夜間潜水の講習指導中に受講生が溺死した事故において、その講習指導者であった本件被告人に業務上過失致死罪が成立するかが問題となった事案です。

本判例によると、事案の具体的な内容は以下のとおりです。

  • 被告人は、スキューバダイビングの資格認定団体から認定を受けた潜水指導者として、潜水講習の受講生に対する潜水技術の指導業務に従事していた。
  • 本件当日の夜間午後9時頃、海岸近くの海中で、本件被害者を含む受講生6名に対して夜間潜水の講習指導を実施した。
  • 本件当時、海中は夜間であることやそれまでの降雨のため視界が悪く、海上では風速四メートル前後の風が吹き続けていた。
  • 被告人は、受講生2名ごとに指導補助者1名を配して各担当の受講生を監視するように指示した上、一団となって潜水を開始した。
  • 被告人は、100メートル余り前進した地点で魚を捕えて受講生らに見せた後、再び移動を開始した。
  • 被告人は、受講生らがそのまま自分についてくるものと考え、指導補助者らにも特別の指示を与えることなく、後方を確認しないまま前進した。
  • 被告人が振り返ると、指導補助者2名しか追従していないことに気づき、移動開始地点に戻った。
  • その間、他の指導補助者1名と受講生6名は、逃げた魚に気をとられていたため被告人の移動に気付かずにその場に取り残され、海中のうねりのような流れによって沖に流された。
  • 取り残された指導補助者が被告人を探し求めて沖に向かって水中移動を行い、受講生らもこれに従った。そのため、被告人は、受講生らを発見できなかった。
  • 取り残された指導補助者は、受講生らと共に沖へ数10メートル水中移動を行い、被害者の圧縮空気タンク内の空気残圧量が少なくなっていることを確認して、いったん海上に浮上した。
  • 取り残された指導補助者は、風波のため水面移動が困難であるとして、受講生らに再び水中移動を指示した。
  • これに従った被害者は、水中移動中に空気を使い果たして恐慌状態に陥り、自ら適切な措置を採ることができないままに、溺死するに至った。

この事案について、原審は被告人に業務上過失致死罪の成立を認めました。これに対して弁護側が上告したのが、本判例です。

問題となった争点

本判例で問題となっている争点は、実行行為と結果との間に因果関係が認められるのかという点です。

因果関係とは?

犯罪が成立するためには、行為が構成要件に該当している必要があります。そして、構成要件に該当する行為と言うためには、実行行為と結果が存在し、その実行行為と結果との間に因果関係がなければなりません。

因果関係が認められるには、「あれなければこれなし」という関係(条件関係)が必要です。因果関係が認められるためには条件関係があれば足りるとする説を条件説と言います。

しかし、条件説によると、結果が極めて異常な経過をたどって発生した場合でも因果関係が認められることになりかねず、妥当ではありません。

そこで、従来の通説は、因果関係があると言うためには、条件関係があることに加えて、当該実行行為から当該結果が発生することが一般的にあり得ること、その関係が異常・不相当なものではないことが必要であるとしています。これを相当因果関係説と言います。

そして、現在の判例は、危険の現実化説を採用していると考えられています。

危険の現実化説に関しては、以下の記事を参考にしてください。

本判例における特殊性

本件では、指導補助者の指導や被害者自身の行動に不適切さがあったことが、被害者死亡の直接的な原因となっています。

そのため、本判例では、被告人以外の第三者や被害者自身の不適切な行為が介在して結果が発生している場合でも因果関係が認められるのかという点が問題となっています。

最高裁平成4年12月17日決定の解説

本判例は、被告人の行為と被害者の溺死という結果との間の因果関係を肯定して、被告人に業務上過失致死罪の成立を認めた原審を支持し、弁護側の上告を棄却しました。

以下、本判例における因果関係の判断について解説します。

前提となる事実

本判例は、被害者および被害者ら受講生とともに行動していた指導補助者について以下の認定を採用しています。

  • 受講生6名は、いずれもまだ初心者の域にあって、潜水の知識、技術を常に生かせるとは限らないレベルだった。
  • 夜間潜水は、視界が悪く、不安感や恐怖感が助長されるため、初心者である受講生らは、圧縮空気タンク内の空気を通常より多量に消費し、指導者からの適切な指示、誘導がなければ、漫然と空気を消費してしまい、空気残圧がなくなった際に、単独では適切な措置を講ぜられないおそれがあった。
  • 特に被害者は、受講生らの中でも、潜水経験に乏しく技術が未熟であって、夜間潜水も初めてである上、潜水中の空気消費量が他の受講生より多かった。
  • 上記被害者の状況は、被告人もそれまでの講習指導を通じて認識していた。
  • 指導補助者らも、いずれも指導補助者としての経験は極めて浅く、潜水指導の技能を十分習得しておらず、夜間潜水の経験も2、3回しかなかった。
  • 指導補助者らは、被告人からは、受講生と共に、海中ではぐれた場合には海上に浮上して待機するようにとの一般的注意を受けていた以外には、各担当の受講生2名を監視することを指示されていたのみで、それ以上に具体的な指示は与えられていなかった。

上記認定によると、受講生らは初心者であり、その中でも特に被害者は特に経験が乏しく、指導者からの適切な指示や誘導がなければ、漫然と空気を多く消費してしまい、空気残圧がなくなった際に単独では適切な措置をとれないおそれがありました。

他方、受講生らに付いていた指導補助者らは、経験が浅かった上に、被告人からは、一般的な注意を受けていただけで、具体的な指示は与えられていませんでした。

そのため、受講生らは、空気残圧がなくなった際に単独では適切な措置をとれないおそれがあったにもかかわらず、経験の浅い指導補助者だけでは、適切な指示や誘導を受けられない状況にありました。

つまり、被告人自身がそばについていなければ、被害者を含む受講生らは、空気残圧がなくなった際に適切な措置をとれないおそれのある状況にあったということです。

因果関係に関する判断

本判例は、まず、被告人の実行行為を「夜間潜水の講習指導中、受講生らの動向に注意することなく不用意に移動して受講生らのそばから離れ、同人らを見失うに至った行為」としています。

その上で、この被告人の実行行為は、「それ自体が、指導者からの適切な指示、誘導がなければ事態に適応した措置を講ずることができないおそれがあった被害者をして、海中で空気を使い果たし、ひいては適切な措置を講ずることもできないままに、でき死させる結果を引き起こしかねない危険性を持つもの」であると評価しています。

前記のとおり、被告人自身がそばについていなければ、被害者を含む受講生らは、空気残圧がなくなった際に適切な措置をとれないおそれのある状況にありました。

それにもかかわらず、被告人が受講生のそばから離れて見失ったのですから、それ自体が、被害者をして溺死の結果を引き起こしかねない危険性を持つ行為であると評価しているのです。

そして、被害者の溺死という結果発生の危険性を持つ実行行為から、被害者の溺死という結果が発生することは、実行行為がそもそも持っていた危険性が現実化したにすぎず、異常なことではありません。

そのため、本判例は、因果関係が認められると判断しているのです。

指導補助者および被害者の不適切な行為に関する判断

本判例も、受講生とともに行動していた指導補助者の指示が適切でなく、また、被害者自身にも恐慌状態に陥って適切な措置をとらなかったという不適切な行動があったことを認めています。

もっとも、本判例は、「被告人を見失った後の指導補助者及び被害者に適切を欠く行動があったことは否定できないが、それは被告人の右行為から誘発されたものであって、被告人の行為と被害者の死亡との間の因果関係を肯定するに妨げないというべきである。」と判示しています。

つまり、本件において、指導補助者および被害者の不適切な行為は、因果関係を肯定する判断に影響を及ぼさないと判断しているのです。

その根拠として、本判例は、被害者らの不適切な行為は、被告人の実行行為から「誘発」されたものであることを挙げています。

本判例は、被害者らが不適切な行為を引き起こす危険も、被告人の実行行為が持つ危険性の中に取り込んで判断していると考えることができます。

具体的に言うと、被告人の実行行為に被害者らの不適切な行為を生じさせる危険性があり、それによって被害者らの不適切な行為が行われた場合には、実行行為が持つ危険性が現実化したにすぎないので、因果関係を肯定する妨げにはならないと考えることができるということです。

まとめ

以上のとおり、本判例は、被告人の行為と被害者死亡の結果との間の因果関係を肯定して、被告人に業務上過失致死罪が成立することを認めました。

参考文献

刑法判例百選Ⅰ(第7版)26ページ

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