「書き方がわからん!!」となりがちな憲法にあって、本書は大変貴重です。
人権各論の部分では、各権利類型ごとに条文・定義・保障根拠・保護範囲を明記した上で、関連する判例を紹介。旧司法試験や予備試験などによって、問題演習までさせてくれます。答案の書き方が見えてくる良書であることに疑いはありません。しかも、合格者による補訂がなされたばっかり!最新の傾向も反映されていましょう。
一方、記述には注釈が必要な部分もあるかと思われます。
例えば、「判例上の『私生活上の自由』に自己情報コントロール権は含まれない。あくまでも、“〜されない自由”としての保障にとどまる。自己情報コントロール権として論証する場合は、判例との差があることについて積極的な理由づけが必要となる。」(27頁)とされていますが、「判例との差」とまで言い切れるかは疑問です。「誤り」などでは無いかと思いますが、他の文献と見比べることで視野が広がるのは間違いありません。
(判例上自己情報コントロール権が事実上認められているとする見解につき、佐藤幸治『日本国憲法論(第2版)』(2020年)成文堂、205頁。自己情報コントロール権としてプライバシー権を再構成することが判例に整合的であるとする見解につき、新井誠他『憲法Ⅱ 人権』(2016年)日本評論社、51頁。外国人指紋押捺事件・住基ネット事件の両判決を分析し、「高度の秘匿性のあるプライバシーが問題となる事案において、自己情報コントロール権が肯定され、意見審査基準としても厳格度の高いものが選択される可能性を判例は留保している」とする見解につき、大島義則『憲法の地図 条文と判例から学ぶ』(2016年)法律文化社、7頁。)
ただし、読みやすさも本書の利点です。注釈が必要だと思う反面、そんなものをつけたら分厚くなっちゃうし…う〜ん…。
いずれにせよ、一度手に取ってみるべき書籍かと思われます。各論点の整理が参考になるため、副読本として参照するのもアリ。私はそのように用いております。
(旧サイト 司法試験受験生)
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