オウム真理教解散命令事件(最決平8.1.30)をどこよりも分かりやすく解説
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「オウム真理教解散命令事件」とは、松本サリン事件、地下鉄サリン事件、その他の数々の凶悪犯罪によって平成初期の日本を震撼させた宗教法人オウム真理教に対して、裁判所が解散命令を出したことの合憲性が争われた事件です。
結論から言うと、最高裁は「宗教法人法は、宗教法人に法人格を与えることを主な目的とするものであって、憲法20条で保障されている信仰の自由を制限するものではない」と判断しました。
詳しく確認しましょう。
この記事の概要
オウム真理教解散命令事件は、松本サリン事件や地下鉄サリン事件など、凶悪犯罪を起こしたオウム真理教に対して裁判所が解散命令を発した合憲性が争点となった事件です。
最高裁は、宗教法人法が信教の自由を侵害せず、解散命令が「必要かつ適切」であると判断しました。この判断は、宗教法人の解散が精神的自由を制限せず、合理的な目的に基づいていることを強調しています。
本件は「信教の自由」と「公共の福祉の調和」を問う重要な判例です。
目次
「オウム真理教解散命令事件」の問題
「信教の自由」とは?
憲法20条には「信教の自由」が定められています。「信教の自由」の内容は、次の3つです。
≪信教の自由の内容≫
- 内心における信仰の自由
- 宗教的行為の自由
- 宗教的結社の自由
「①内心における信仰の自由」は思想・良心の自由と同様の性質を有しており、絶対的に保障されています。
「②宗教的行為の自由」には、「宗教的行為を行う自由」と「宗教的行為を強制されない自由」があります。後者の「宗教的行為を強制されない自由」は、憲法20条2項で「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。」と明記されています。
憲法20条
〔信教の自由〕第20条信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
「③宗教的結社の自由」は、「結成する自由」と「結成しない(加入を強制されない)自由」を意味します。また、宗教的結社の結成や活動について「公権力による干渉を受けないことの自由」も含まれると解されています。
「オウム真理教解散命令事件」では何が問題となったか?
オウム真理教解散命令事件に関係するのは「③宗教的結社の自由」です。
「宗教法人法」には、次の規定が設けられています。
- 宗教法人の設立には「所轄庁の認証」が必要(宗教法人法12条)。
- 一定の場合、裁判所は「宗教法人の解散命令」を発することができる(宗教法人法81条)。
これらの規定は「『公権力による宗教法人への干渉』に当たるため、宗教的結社の自由を侵害しているのではないか?」が問題となりました。
「信教の自由」の限界
3つの「信教の自由」のうち、「①内心における信仰の自由」は絶対的に保障されます。
しかし、「宗教的行為」や「宗教的結社」は外部的行為を伴うことから、第三者の権利、利益に何らかの影響を及ぼす恐れがあります。そして、「外部的行為が第三者にとって害悪となる場合」は「国家権力による規制も認められる」と解されています。
ただ、外部的行為も内心における信仰の自由と密接にかかわるものである以上、「必要不可欠な目的を達成するための最小限度の制約」にとどめることが求められています。
「どの程度の制約なら認められるのか?」については、様々な判例が出ています。
「オウム真理教解散命令事件」では、裁判所による宗教法人の解散命令が「必要不可欠な目的を達成するための最小限度の制約」と言えるのかが問題になりました。
「オウム真理教解散命令事件」の概要
「オウム真理教解散命令事件」の概要
オウム真理教は、1989年(平成元年)8月に東京都知事の認証を受けて宗教法人化しました。
しかし、1994年(平成6年)から1995年(平成7年)にかけて、松本サリン事件、地下鉄サリン事件などのテロ事件を起こしたことから、代表の麻原彰晃元死刑囚らが逮捕された直後の1995年(平成7年)6月に検察官により裁判所に対して、解散命令の請求がなされました。
一連のテロ行為が、宗教法人法81条1項一号、二号前段の下記の規定に該当することが理由です。
- 法令に違反して「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」をしたこと
- 「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」をしたこと
第1審と第2審はともに、検察官の請求を認める決定を下したことから、オウム真理教側が「教団信者の信教の自由」が侵害されているとして、最高裁に対して特別抗告を行いました。
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「オウム真理教解散命令事件」の最高裁の考え方
最高裁は、特別抗告を棄却しました。「どのように判断してその結論に至ったのか?」を確認しましょう。
「宗教法人法の対象」について
宗教法人法は「宗教法人に法人格を与えることを主な目的とする(宗教団体の世俗的側面のみを目的とする)法律」で、「信仰などの精神的・宗教的側面に対して何らかのお墨付きを与えるものではない」としています。
「解散命令の性質」について
裁判所の解散命令も「宗教団体の世俗的側面だけ」を対象とし、その「精神的・宗教的側面」を対象外としていると述べています。
「信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わない」ので、「信教の自由には何らの影響もない」ということです。宗教法人が解散した後でも、「信者は法人格を有しない宗教団体を存続させることができます」し、「宗教上の行為を行うこと」もできます。
そのため、最高裁は、裁判所による解散命令は、「その制度の目的も合理的である」と判断しています。
法八一条に規定する宗教法人の解散命令の制度は、前記のように、専ら宗教法人の世俗的側面を対象とし、かつ、専ら世俗的目的によるものであって、宗教団体や信者の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではなく、その制度の目的も合理的であるということができる
「解散命令による影響」について
裁判所による解散命令が出された場合は、「宗教法人の清算手続き」が行われます。
宗教法人名義の施設などの財産がすべて処分されることになるため、これらの財産を用いて宗教的活動を行っていた信者たちに支障が生じます。
そのため、信教の自由が憲法の保障する精神的自由の一つであることを鑑みて、裁判所による解散命令は慎重に判断する必要があるとしています。
宗教法人に関する法的規制が、信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても、これに何らかの支障を生じさせることがあるとするならば、憲法の保障する精神的自由の一つとしての信教の自由の重要性に思いを致し、憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない。
オウム真理教に対する「解散命令」について
上記までの点を踏まえた上で、最高裁はオウム真理教に対する解散命令について次のように判断しています。
これらの点を踏まえて「オウム真理教に対する解散命令は、教団信者の信教の自由を侵害するものではなく『合憲』だ」と判断しました。
≪最高裁の判断≫
- オウム真理教が数々の凶悪犯罪を計画し、特に組織的にサリンを生成していたことについて、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められ、宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたことが明らか」である。
- そのため、オウム真理教に対する解散命令は、「必要かつ適切」である。
- 解散命令によりオウム真理教とその信者の活動に支障を生ずることについては、「解散命令に伴う間接的で事実上のものであるにとどまる」と言える。
- オウム真理教やその信者らの精神的・宗教的側面に及ぼす影響を考慮しても「必要でやむを得ない法的規制である」ということができる(LRAの基準)。
- 解散命令は、裁判所の司法審査によって発せられており、「手続の適正も担保されている」と言える。
- 宗教上の行為の自由は、最大限に尊重すべきものであるが、「絶対無制限のものではない」と言える。
判決文を読んでみよう
判例の理解を深めるために、余裕がある方は判決文を読んでみましょう!
◆判決文抜粋
「所論は要するに、抗告人を解散する旨の第一審決定(以下「本件解散命令」という。)及びこれに対する即時抗告を棄却した原決定は、抗告人の信者の信仰生活の基盤を喪失させるものであり、実質的に信者の信教の自由を侵害するから、憲法二〇条に違反するというのである。以下、所論にかんがみ検討を加える。
本件解散命令は、宗教法人法(以下「法」という。)の定めるところにより法人格を付与された宗教団体である抗告人について、法八一条一項一号及び二号前段に規定する事由があるとしてされたものである。
法は、宗教団体が礼拝の施設その他の財産を所有してこれを維持運用するなどのために、宗教団体に法律上の能力を与えることを目的とし(法一条一項)、宗教団体に法人格を付与し得ることとしている(法四条)。すなわち、法による宗教団体の規制は、専ら宗教団体の世俗的側面だけを対象とし、その精神的・宗教的側面を対象外としているのであって、信者が宗教上の行為を行うことなどの信教の自由に介入しようとするものではない(法一条二項参照)。法八一条に規定する宗教法人の解散命令の制度も、法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為(同条一項一号)や宗教団体の目的を著しく逸脱した行為(同項二号前段)があった場合、あるいは、宗教法人ないし宗教団体としての実体を欠くに至ったような場合(同項二号後段、三号から五号まで)には、宗教団体に法律上の能力を与えたままにしておくことが不適切あるいは不必要となるところから、司法手続によって宗教法人を強制的に解散し、その法人格を失わしめることが可能となるようにしたものであり、会社の解散命令(商法五八条)と同趣旨のものであると解される。
したがって、解散命令によって宗教法人が解散しても、信者は、法人格を有しない宗教団体を存続させ、あるいは、これを新たに結成することが妨げられるわけではなく、また、宗教上の行為を行い、その用に供する施設や物品を新たに調えることが妨げられるわけでもない。すなわち、解散命令は、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないのである。もっとも、宗教法人の解散命令が確定したときはその清算手続が行われ(法四九条二項、五一条)、その結果、宗教法人に帰属する財産で礼拝施設その他の宗教上の行為の用に供していたものも処分されることになるから(法五〇条参照)、これらの財産を用いて信者らが行っていた宗教上の行為を継続するのに何らかの支障を生ずることがあり得る。このように、宗教法人に関する法的規制が、信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても、これに何らかの支障を生じさせることがあるとするならば、憲法の保障する精神的自由の一つとしての信教の自由の重要性に思いを致し、憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない。
このような観点から本件解散命令について見ると、法八一条に規定する宗教法人の解散命令の制度は、前記のように、専ら宗教法人の世俗的側面を対象とし、かつ、専ら世俗的目的によるものであって、宗教団体や信者の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではなく、その制度の目的も合理的であるということができる。そして、原審が確定したところによれば、抗告人の代表役員であったA及びその指示を受けた抗告人の多数の幹部は、大量殺人を目的として毒ガスであるサリンを大量に生成することを計画した上、多数の信者を動員し、抗告人の物的施設を利用し、抗告人の資金を投入して、計画的、組織的にサリンを生成したというのであるから、抗告人が、法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められ、宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたことが明らかである。抗告人の右のような行為に対処するには、抗告人を解散し、その法人格を失わせることが必要かつ適切であり、他方、解散命令によって宗教団体であるオウム真理教やその信者らが行う宗教上の行為に何らかの支障を生ずることが避けられないとしても、その支障は、解散命令に伴う間接的で事実上のものであるにとどまる。したがって、本件解散命令は、宗教団体であるオウム真理教やその信者らの精神的・宗教的側面に及ぼす影響を考慮しても、抗告人の行為に対処するのに必要でやむを得ない法的規制であるということができる。また、本件解散命令は、法八一条の規定に基づき、裁判所の司法審査によって発せられたものであるから、その手続の適正も担保されている。
宗教上の行為の自由は、もとより最大限に尊重すべきものであるが、絶対無制限のものではなく、以上の諸点にかんがみれば、本件解散命令及びこれに対する即時抗告を棄却した原決定は、憲法二〇条一項に違背するものではないというべきであり、このように解すべきことは、当裁判所の判例(最高裁昭和三六年(あ)第四八五号同三八年五月一五日大法廷判決・刑集一七巻四号三〇二頁)の趣旨に徴して明らかである。」
まとめ
最高裁は、宗教法人法81条による解散命令は、信者等による精神的・宗教的活動を規制するわけではないことから、憲法20条で保障されている信仰の自由を制限するものでないと判断しました。
解散命令により活動に支障が出る点についても、間接的で事実上のものにとどまるとしています。
ただ、信仰の自由と密接に関係するだけに解散命令は慎重に判断する必要があります。
本件については、オウム真理教に対する解散命令の必要性と信者らの活動に支障が生じることを比較考量しても、必要でやむを得ないものであるとの判断を下しました。


































