【難関論点】死因贈与と遺贈の規定の準用【論述のコツと理解のポイント】

「死因贈与と遺贈の規定の準用の論点がよくわからない」

「昭和47年5月25日最高裁がよくわからない」

「昭和57年4月30日判決がよくわからない」

かもっち

今回は、相続法の重要論点の一つである「死因贈与と遺贈の規定の準用」について解説をしたいと思います。

あひるっぺ

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その中で、債権法を絡めた出題が可能な「死因贈与と遺贈の規定の準用」の論点は、出題可能性の高い論点と言えるかと思います。

本記事では、「死因贈与」と「遺贈」の違いという基本的な点から関連する最高裁判例まで解説をさせていただきます。

※本記事の解説は、当サイトが各文献を参考に整理した見解であり、内容の正確性を保証するものではございませんのでご留意ください。

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死因贈与と遺贈の違いとは?

まずは、基本的なことから確認していきましょう。

死因贈与と遺贈の違いはなんでしょう?」

いずれも相続を契機とし、財産を移転する効果を有する点で共通していますが、法的には明確に区別されています。

まず「死因贈与」とは、「贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与」(民法554条)のことです。

ポイントは「贈与(契約)」の一種という点です。そのため、贈与をする者と贈与を受ける者との間で合意が必要となります。両者間の合意を必要となる点で、遺贈とは異なります。

次に、「遺贈」とは「遺言者が、(遺言により)包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分すること」(民法964条)です。遺贈は、単独行為です。

遺贈は、遺言書の中で、相続財産の全部または一部を処分する行為です。相続財産をあげる者ともらう者との間で合意は不要です。遺言者が一方的に、遺言書の中で書けば実現します。

死因贈与と遺贈の違い

・「死因贈与」は贈与者の死亡によって効果を生ずる贈与であって、当事者間の合意が必要。
・「遺贈」は遺言者が遺言の中で、財産を処分する行為であり、当事者間の合意は不要。

死因贈与には遺贈の規定が準用される

以上のとおり「死因贈与」と「遺贈」は法律上、明確に区別をされていますが、相続を契機に財産を移転させる効果を有するという点で、類似しています。

そのため、民法は、死因贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用すると規定しています。

(死因贈与)
第五百五十四条 贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

昭和47年5月25日判決の論述のコツと理解のポイント

かもっち

さて、ここで死因贈与と遺贈の規定の準用に関する重要判例の一つである「昭和47年5月25日判決」について解説をしたいと思います。

あひるっぺ

後で解説する「昭和57年4月30日判決」の理解の前提となる判例だね!

事案の概要

甲には、妻Yと、子Xらがいた。甲は、生前、Yに対し、書面によって自己所有不動産の死因贈与をしたが、Yとの関係が悪化したので、死因贈与を取り消した。他方、Yは、死因贈与に基づき、当該不動産について仮登記手続をしていた。その後、甲が死亡したため、Xらは、Yに対し、当該死因贈与契約の不存在の確認とYのなした仮登記の抹消登記手続を求めて裁判を起こした。

法律上の争点

甲は、Yとの間の死因贈与を取り消しているところ、死因贈与に、遺言者はいつでも遺言の方式に従って遺言の全部又は一部を撤回することができるとする民法1022条が準用されるかのが争点となった。

最高裁の判断

最高裁は、「死因贈与については遺言の取消に関する民法1022条がその方式に関する部分を除いて準用されると解すべきである」と判断しました。

論述のコツと理解のポイント

まず、民法1022条の条文を確認しておきましょう。

(遺言の撤回)
第千二十二条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

この規定が死因贈与に準用されるのであれば、贈与者は、死因贈与契約をした後に、一方的に死因贈与を取り消すことができることになります。死因贈与は、遺贈と異なり、当事者間の合意に基づくものです。契約の拘束力という観点から、準用が制限されるべきではないか、という問題意識があります。

結果として、最高裁は、1022条の準用を認めています。

その理由としては、贈与者の死後に関する財産の処分については、遺贈と同様に、贈与者の最終意思を尊重し、これによって決するのを相当、と述べています。

死因贈与は、贈与者の死亡によって効果を生ずるものであり、相続財産の処分行為といえます。この意味で、贈与者(被相続人)の最終意思が優先されるべきだという判断をしています。

契約の拘束力、契約の相手方の信頼よりも、贈与者の最終意思を尊重したと言えるかと思います。

①民法1022条の規定は、死因贈与に準用される。

②趣旨は、贈与者の死後に関する財産の処分については、遺贈と同様に、贈与者の最終意思を尊重し、これによって決するのが相当なため。

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昭和57年4月30日判決の論述のコツと理解のポイント

かもっち

続いて、昭和57年4月30日判決について、その理解のポイントと論述のコツをご紹介したいと思います。

あひるっぺ

最高裁昭和57年4月30日判決は、判例百選にも掲載されている重要判例だね!

事案の概要

遺言者甲と、長男乙は、負担付き死因贈与契約を締結した。具体的には、乙の在職中、乙が甲に、定額贈与をし、これを履行した場合には、死因贈与として甲の財産の全てを乙に贈与するというものであった。

その後、甲は、乙の兄弟らに対して、所有する財産の一部を遺贈する内容の遺言(本件遺言)を作成した。

乙は、本件遺言が無効であるなどと主張した。

法律上の争点

「負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与の受贈者が負担の全部又はこれに類する程度の履行をした場合と民法1022条、1023条の規定の準用の有無」(原文)

本件は、死因贈与の中でも、負担付き死因贈与契約において、負担がすでに履行されている場合に、遺言の取消の規定が準用されるのか、という点が争われました。

最高裁の判断

「負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与の受贈者が負担の全部又はこれに類する程度の履行をした場合には、右契約締結の動機負担の価値と贈与財産の価値との相関関係契約上の利害関係者間の身分関係その他の生活関係等に照らし右契約の全部又は一部を取り消すことがやむをえないと認められる特段の事情がない限り、民法1022条、1023条の各規定は準用されない。」(原文)

「負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与契約に基づいて受贈者が約旨に従い負担の全部又はそれに類する程度の履行をした場合においては、贈与者の最終意思を尊重するの余り受贈者の利益を犠牲にすることは相当でないから」(原文)

理解のポイントと論述のコツ

まず、議論の前提として、死因贈与に関して、遺言の取消の規定が準用されることは認められています。

そのうえで、本判決は、負担付き遺贈のケースで、しかも、負担がすでに履行されている事例において、遺言の取消の準用が制限されるべきではないか、という点が争点となりました。

このような場合にまで、遺言取消の規定を準用すると、負担を履行した受贈者の理解を著しく害しないかという問題意識があります。

この点について、最高裁は、原則として、準用されない。特段の事情が認められる場合には、準用される、という判断枠組みを明らかにしました。

「特段の事情」の具体的な中身までは言及されていませんが、例えば、受贈者が贈与者に対して、忘恩行為をした場合、大きな事情変更などが学説上、指摘されているところです。

①負担付死因贈与の場合、原則として、民法1022条、1023条は準用されない。

例外として、負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与の受贈者が負担の全部又はこれに類する程度の履行をした場合、(右契約締結の動機、負担の価値と贈与財産の価値との相関関係、契約上の利害関係者間の身分関係その他の生活関係等に照らし)右契約の全部又は一部を取り消すことがやむをえないと認められる特段の事情がある場合には、民法1022条、1023条は準用される。

③例外の適用前提:「負担付死因贈与の受贈者が負担の全部またはこれに類する程度の履行をした

④特段の事情の考慮事項:①契約締結の動機②負担の価値と贈与財産の価値との相関関係③契約上の利害関係者間の身分関係④その他生活関係等

契約の全部または一部を取り消すことがやむをえないと認められる特段の事情が必要。

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