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【会社法】令和7年司法試験再現答案【合格者答案】

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令和7年司法試験 会社法 再現答案

第1 設問1

1.甲社の監査役Fは、甲社を代表して(会社法386条1項1号)、Aに対し、423条1項に基づく責任追及の訴えを提起しているところ、甲社の主張は認められるか。

(1)まず、Aは甲社の代表取締役であるから、「役員等」(423条1項括弧書)に当たる。

(2)次に、甲社は、工業用機械βの購入は、「重要な財産の…譲受け」(362条4項1号)に該当し、これを取締役会の承認なく行ったことが同項柱書に反し、355条に反するため、任務懈怠があると主張することが考えられる。かかる主張は認められるか。

ア この点につき、「重要な財産の…譲受け」(362条4項1号)か否かは、会社の規模等により異なり得るため、当該財産の価額、総資産に占める割合、会社における従来の取扱い等から総合的に判断すべきである。

イ これを本件についてみると、工業用機械βは4000万円であり、これは甲社の総資産額100億円のうち0.4%程度にとどまる。また、甲社の内規では、5000万円以上の取引については取締役会の承認が必要とされているところ、これまでに5000万円未満の取引の承認が甲社の取締役会の議題とされたことはなかったのであり、4000万円の工業用機械βの取引も、内規によれば取締役会の承認は不要な規模の取引である。

 そのため、工業用機械βの購入は甲社にとって「重要な財産の…譲受け」に当たらない。

ウ したがって、同項柱書に反しないから、上記主張は認められない。

(3)そうだとしても、工業用機械βの購入は「重要な業務執行の決定」(362条4項柱書)に該当し、これを取締役会の承認なく行ったことが同項柱書に反し、355条に反するため、任務懈怠があると主張することが考えられる。かかる主張は認められるか。

ア 同項柱書が「重要な業務執行の決定」を取締役会の決議事項としたのは、重要な業務執行の決定は、当該会社に及ぼす影響が大きいため、取締役会による慎重な決定を求め、損害を防止する点にある。そうすると、「重要な業務執行の決定」とは、取締役会において重大な関心事となっていた事項における決定をいう。

イ これを本件についてみると、甲社の取締役会において、工業用機械βの購入の是非について複数回協議がされており、1回の設備投資の額として4000万円は過大ではないかとの意見があったものの、本件方針が確認されている。もっともその際、Eが「乙社との供給契約について協議してその内容を確認し、甲社が不足の損害を被らないよう最善の注意を尽くすべきである。」との意見を述べており、B、C、及びDもかかる意見に賛同したことから、上記取締役会の時点では、取締役会において本件方針が確認されたにとどまり、工業用機械βを購入して設置することについては、乙社との今後の協議の結果を踏まえて改めて取締役会で承諾を得るものとされている。

 このように、複数回の協議の対象となったり、改めて取締役会での承諾を得るものとされたことに鑑みれば、工業用機械βの購入は、甲社取締役会にとって重大な関心事となっていたといえる。

 そのため、工業用機械βの購入は、「重要な業務執行の決定」に当たる。

ウ したがって、同項柱書に反するから、上記主張は認められる。

(4)Aは、工業用機械βの購入に際し、次回の取締役会で速やかに事後承諾が得られるだろうと安易に考え、購入に至っているから、過失(428条1項反対解釈)がある。

(5)その後、乙社は、甲社に対し、他者と電子機器αに関する供給契約を締結したので甲社とは新たな供給契約を締結しない旨を連絡し、これにより、甲社に設置された工業用機械βは使われることのないまま甲社の工場で保管されている。工業用機械βには汎用性がなく、電子機器αの生産以外の用途には転用できないものであった。そうすると、電子機器αの生産予定のない甲社は、Aの上記任務懈怠により、工業用機械βの購入価格相当額の4000万円の「損害」(423条1項)を被ったといえる。

2.以上より、甲社の主張は認められ、Aに対する上記責任追及の訴えは認められる。

第2 設問2

1.甲社の監査役Fは、甲社を代表して(386条1項1号)、Aに対し、423条1項に基づく責任追及の訴えを提起しているところ、甲社の主張は認められるか。

(1)Aは「役員等」(同項)にあたる。

(2)甲社は、各取締役の報酬の具体的な配分を取締役会に一任することは361条1項2号に反し、355条に反するから、任務懈怠があると主張することが考えられる。

 しかし、361条の趣旨はお手盛りを防止することにあるところ、各取締役への報酬の総額の最高限度額を決定すればお手盛りは防止できるから、各取締役に対する報酬の総額の最高限度額を株主総会決議で定めれば、上記一任も有効である。

 したがって、361条1項2号に反しないから、甲社の上記主張は認められない。

(3)甲社は、令和5年6月に招集された定時株主総会において、株主の質問に対するAの説明が314条本文に反し、355条に反するから、任務懈怠があると主張することが考えられる。かかる主張は認められるか。

ア この点につき、314条の趣旨は、株主に判断材料を提供し、もって株主の慎重な判断を担保する点にある。

 そこで、平均的な株主が議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断をなし得る状態に達するといえる程度の説明が必要である。

イ これを本件についてみると、上記総会において、株主から「営業赤字が続いている今、なぜ取締役の報酬を増やす必要があるのか。」との質問があった際、Aは、「同業他社との競争が激しくなっているため、今後はより優秀な人材を獲得して取締役に就任してもらう必要があるが、今のままでは報酬額が低く優秀な人材を獲得することができない。また、同業他社と比べても報酬額が低いという我が社の現状を踏まえれば、現在の取締役の勤労意欲の向上を図るという観点も欠かすことができない。これらの事情を総合的に考慮し、取締役の報酬の総額の上限額を増やす必要がある。」と回答している。しかし、その後、取締役会において各取締役の報酬の具体的な配分について再一任を受けたAは、自らの報酬の年額を前年度の3000万円から2億円増額して2億3000万円とする一方で、B、C、D及びEの報酬の年額は前年度と同額とする旨決定している。これは、自分の報酬額だけを大幅に上げるものであり、各取締役の報酬額増額に結びついておらず、優秀な人材の獲得や勤労意欲の向上につながるものではない。そうすると、Aは、自分の報酬額を上げるためだけに取締役の報酬の総額の上限額を増やす目的であったといえ、上記説明は虚偽にあたる。

 そのため、平均的な株主が議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断をなし得る状態に達するといえる程度の説明があったとはいえない。

ウ したがって、Aの説明は314条本文に反するから、上記主張は認められる。

(4)そして、上記説明に基づき、本件議案が株主総会において可決され、Aへの再一任を経て本件報酬額決定がなされ、Aに2億3000万円の報酬が実際に支払われているところ、Aの上記説明が虚偽であると分かっていれば株主は本件議案に賛成しなかったといえるから、そのうち増額分の2億円は甲社の「損害」(423条1項)といえ、かかる損害と上記説明との間には因果関係がある。

(5)また、Aには「過失」(428条前段反対解釈)がある。

(6)以上より、甲社の主張は認められ、Aに対する上記責任追及の訴えは認められる。

第3 設問3

1.本件請求は認められるか。433条該当性が問題となる。

(1)議決権保有要件(同条1項柱書前段)

ア Gは、令和6年4月時点で、甲社の総株主の議決権の約3.2%に相当する数の株式を保有しており、同条に基づく閲覧請求の議決権保有要件たる3%を上回っていた。しかし、本件増資の結果、令和6年5月末日の時点で、Gの保有する議決権の割合は甲社の総株主の議決権の約2.9%にまで下がり、令和7年3月までに変動がなかった。そして、令和7年3月に本件請求に係る訴えの事実審の口頭弁論が終結した。

そうすると、433条に基づく閲覧請求訴訟の訴訟要件たる議決権保有要件が事実審の口頭弁論終結時に判断される以上、本件請求においてGの議決権保有要件の充足は認められず、本件請求は認められないのではないかとも思える。

イ しかし、本件増資は、本件請求の結果次第で責任追及をされうる立場にあったAが主導したものであり、Gの議決権保有要件の充足を妨げるために行われたものとして、特段の事情が認められ、例外的に議決権保有要件が充足されたといえないか。

(ア)これを本件についてみると、本件増資を決定した甲社の取締役会において、本件増資を速やかに実施すべきであると述べて終始議論を主導したのはAであったところ、甲社取締役会は、経営状態の悪化により事業継続のための緊急の資金が必要であることを本件増資の理由としている。しかし、この時点で、甲社の経営状態が従来と比べて悪化していたことは事実であったものの、甲社は特に使う当てのない多額の預貯金を有していたことから、事業継続のための緊急の資金が必要であるという状態にはなかったのであり、それにもかかわらず本件増資が決定されたのは、Aが本件請求により自己の責任追及をされるのを防ぐためであると考えられる。そうすると、本件増資は、Gの議決権保有要件の充足を妨げる目的でなされたものといえる。

 したがって、特段の事情が認められ、例外的に議決権保有要件が充足されたといえる。

ウ したがって、Gは本件請求において議決権保有要件を満たす。

(2)Gは、令和6年7月から9月までの期間に甲社が海外調査費用として支出した金銭の使途を調査する目的であることを明示しているから、433条1項柱書後段を満たす。

(3)同条2項各号該当性

ア まず、Gは、上記調査の結果次第ではAの責任を問う株主代表訴訟を提起することも視野に入れているから、株主の共益権という「権利の…行使に関する調査」(1号)の目的で本件請求を行っているといえる。そのため、同号には該当しない。

イ 次に、代表取締役の不正行為に対する株主代表訴訟提起は株主の共同の利益となるから、2号にも該当しない。

ウ そして、Gは、自らは営業を行っておらず、甲社と競合する事業を営む会社の株式又は持分を一切保有していないのであるから、甲社の業務と「実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものである」(3号)とはいえない。そのため、3号にも該当しない。

エ 4号、5号に該当する事情もない。

(4)よって、本件請求は認められる。                     以上

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この記事を書いた人

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