
【法スタ限定】視覚的に判例を整理できる特製キットをプレゼント!!
※閉じるとこの案内は再表示されません
かもっち・あひるっぺからの挨拶
はじめまして、かもっち@hosyocomです。
皆さん、法律の勉強、お疲れ様です!!
法スタは、法律を学ぶすべての人に向けた法律の勉強法専門メディアです。
私は、司法試験受験生のあひるっぺ!
司法試験予備試験、法科大学院入試、法律書籍や人気予備校のレビュー。
必要なノウハウや勉強の進め方を、初心者にもわかりやすく解説しています。
姉妹サイトとして「法律書籍の口コミサイト」や「法科大学院の口コミサイト」も運営しています。
動画解説の「法スタチャンネル」も大好評、運営中!
▽動画解説を順次公開中▽
私たちは、合計370件以上の豊富なコンテンツを揃え、皆さんの法律学習を全力でサポートします。
知りたい情報が必ず見つかるはず!ぜひ一緒に学びましょう!
この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです!
(挨拶おわり)
皆さん、知ってましたか?
あのアガルートがアプリをリリースしています。
これにより講義視聴がより便利になり、学習の効率が大幅にアップしました!
是非、公式サイトで詳細を確認してください!
\講義動画のダウンロード可能/
データ通信料を気にせず受講しよう!!
被害者に自殺を強要し、その行為を利用して保険金を得ようとした――
このような異常な事案に対して、刑法上どのように評価すべきでしょうか。
最高裁平成16年1月20日決定は、被害者が自ら命を絶とうとした行為について、その背景にある加害者の暴行・脅迫や支配的関係に着目し、「殺人罪の間接正犯」が成立すると判断しました。
この判例は、司法試験でも頻出の間接正犯の成立要件や、故意・違法性の錯誤の処理を深く理解するうえで極めて重要です。
本記事では、判例の事案、争点、そして判示内容を丁寧に整理しつつ、司法試験でどう答案に活かすべきかを徹底的に解説します。
みなさ~ん!
この記事の本題に入る前に、ちょっと耳寄りな情報をご案内します。
「これさえやりきれば、もう怖くない!」
そんな演習書や問題集が欲しいと思ったことはありませんか?
通称「重問」と呼ばれるアガルートの重要問題がおすすめ
その人気の秘密や効果的な活用方法について、アガルートの専任講師に直接インタビューを行いました。
受験生に支持される理由が詰まった記事、ぜひチェックしてみてくださいね!
今売れてます!!
\司法試験合格者占有率37.8%/
▼重要問題だけで合格する究極の勉強法【独占インタビュー】▼
殺人罪の実行行為性(間接正犯)や故意の有無が問題となった判例として、最高裁判所第三小法廷平成16年1月20日決定(以下「本判例」と言います。)があります。
本判例の事案は、以下のとおりです。
この事案について、原審は、被告人に殺人未遂罪(刑法203条、199条)が成立することを認めました。
この原審に対して、殺人罪の実行行為性および故意がないことなどを主張して、弁護人・被告人が上告したのが、本判例です。
本判例で問題となった争点は、被告人に殺人罪の実行行為性および故意が認められるのかという点です。
本件では、被告人が直接に殺害行為を行ったわけではなく、被害者自身に自動車ごと海中に飛び込ませるという行為をさせています。
そこで、被告人が被害者の行動を利用した行為が、殺人罪の実行行為と言えるのか、すなわち、殺人罪の間接正犯が成立するのかが問題となります。
正犯とは、犯罪の実行行為を行う者のことを言います。
この実行行為を自らの手で行った者のことを直接正犯と言います。実行行為を自らの手で行うことを自手実行と言うことがあります。
これに対し、間接正犯とは、自らは直接手を下さずに、他人を利用して犯罪を実現し、共犯としてではなく正犯として処罰される者のことを言います。他人を利用して実行行為を行わせることを他手実行と言うことがあります。
正犯とは、本来、自ら実行行為(自手実行)をした者です。しかし、間接正犯の場合は、自らは実行行為を行っていません。
したがって、自ら実行行為を行っていない者を正犯として扱うには、他人を利用する行為が、自手実行の場合と同様に、結果発生の現実的な危険性を生じさせるものである場合でなければなりません。
では、どのような場合に、他人を利用する行為が結果発生の現実的な危険性を生じさせるものであるのかと言うと、それは、他人の行為を「自己の犯罪実現のための道具として利用した」場合です。
例えば、ナイフを使って人を殺傷する場合のように、道具を使って犯罪を実現することがあります。間接正犯もそれと同じです。人間を一方的に道具のように利用して犯罪を実現するのが、間接正犯です。
したがって、間接正犯が認められるかどうかは、他人の行為を「自己の犯罪実現のための道具として利用した」と言えるかどうかが判断基準となります。
本判例以外の判例でも、他人の行為を「自己の犯罪実現のための道具として利用した」場合に、間接正犯の成立を認めたものがあります(最高裁判所第一小法廷平成9年10月30日決定)。
被害者自身の行為が介入する場合、その行為が被害者自身の意思に基づくものであるときは、間接正犯は成立しません。
なぜなら、被害者自身の意思に基づいて結果が発生している以上、法益侵害が認められないからです。
保護法益が生命である殺人罪の場合も、被害者の意思に基づいている以上、間接正犯は成立しません。ただし、生命の重要性から、自殺関与罪(刑法202条)は成立します。
もっとも、これは、被害者の意思が瑕疵のないものであった場合です。
被害者の意思が瑕疵あるものであった場合には、被害者の意思に基づいているとは言えませんから、被害者の行動を道具として利用していると認められるときには、間接正犯が成立します。
被害者の意思に瑕疵ある場合として、被害者が行為を強制されていた場合が考えられます。
被害者の行為を強制したからと言って、必ずしも、その行為が被害者の意思に基づかないものになるわけではありません。
したがって、被害者の行為を強制したことにより、他の行為を選択できない程度に被害者の意思決定の自由が奪われていたと言える場合に、被害者の行為を道具として利用したものとして、間接正犯が成立すると考えるべきでしょう。
本判例以外の判例でも、厳寒の深夜に銘酊しかつ暴行を受けて衰弱している被害者を河川堤防上に連行し、その上衣やズボンを脱がせた上、脅迫して被害者を護岸際まで追いつめて逃げ場を失わせ、被害者が川に転落するのやむなきに至らしめて溺死させた行為は殺人罪に該当するとして、間接正犯の成立を認めたものがあります(最高裁判所第一小法廷昭和59年3月27日決定)。
本件被害者は、自殺をするつもりなどありませんでした。被告人は、そのことを認識していません。
そのため、被告人に錯誤があり、殺人罪の故意がないのではないかという点も問題となっています。
本判例における錯誤は、違法性の錯誤と呼ばれる錯誤です。構成要件に該当する違法な行為をしているにもかかわらず、それが違法でないと誤信している場合のことです。
違法性の錯誤には、単なる法の不知によって錯誤に陥っている場合と、法は理解しているものの、違法でないと誤信している場合(あてはめの錯誤)があります。本判例は、このうちあてはめの錯誤に該当します。
違法性の錯誤のように違法性の意識を欠く場合、犯罪の成立にどのような影響を生じるのかについては、「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。」と規定する刑法38条3項本文の解釈と関連して問題となります。
この違法性の意識の問題については、以下のような説があります。
判例は、違法性の意識不要説を採用していると考えられています。ただし、下級審裁判例の中には、違法性の意識を欠いたことに相当の理由がある場合には、責任が阻却されるとするものがあります。
判例の立場である違法性の意識不要説からすると、あてはめの錯誤の場合も、犯罪の成立に影響を与えないことになります。
本判例は、被告人に殺人未遂罪の成立を認めた原審を支持し、弁護側・被告人からの主張を退けて、上告を棄却しています。
以下、本判例の判断について解説します。
本判例は、以下のとおり判示して、被告人が被害者を利用した行為に殺人罪の実行行為性を認めました。
「被告人は,事故を装い被害者を自殺させて多額の保険金を取得する目的で,自殺させる方法を考案し,それに使用する車等を準備した上,被告人を極度に畏怖して服従していた被害者に対し,犯行前日に,漁港の現場で,暴行,脅迫を交えつつ,直ちに車ごと海中に転落して自殺することを執ように要求し,猶予を哀願する被害者に翌日に実行することを確約させるなどし,本件犯行当時,被害者をして,被告人の命令に応じて車ごと海中に飛び込む以外の行為を選択することができない精神状態に陥らせていたものということができる。
被告人は,以上のような精神状態に陥っていた被害者に対して,本件当日,漁港の岸壁上から車ごと海中に転落するように命じ,被害者をして,自らを死亡させる現実的危険性の高い行為に及ばせたものであるから,被害者に命令して車ごと海に転落させた被告人の行為は,殺人罪の実行行為に当たるというべきである。」
前記のとおり、被害者の行為を利用する場合であっても、被害者の行為を強制したことにより、他の行為を選択できない程度に被害者の意思決定の自由が奪われていたと言える場合には、被害者の行為を道具として利用したものとして、間接正犯が成立すると考えられます。
本判例は、被告人が「本件犯行当時,被害者をして,被告人の命令に応じて車ごと海中に飛び込む以外の行為を選択することができない精神状態に陥らせていた」と判示しており、被害者は、被告人によって、他の行為を選択できない程度に被害者の意思決定の事由が奪われていたと言えます。
その上で、そのような「精神状態に陥っていた被害者に対して,本件当日,漁港の岸壁上から車ごと海中に転落するように命じ,被害者をして,自らを死亡させる現実的危険性の高い行為に及ばせた」と判示しており、意思決定の事由が奪われた被害者に、死亡の現実的危険性の高い行為をするよう強制していると言えます。
したがって、被告人は、殺人罪実現のために被害者の行為を道具として利用したと言えるので、間接正犯の成立が認められることになります。
本判例も、「被害者に命令して車ごと海に転落させた被告人の行為は,殺人罪の実行行為に当たる」と結論付けています。
被告人には、被害者が自殺するつもりがなかったという点に誤信はあるものの、これは違法性の錯誤(あてはめの錯誤)にすぎません。
前記のとおり、違法性の意識不要説からすると、違法性の意識は犯罪成立に影響を与えません。したがって、違法性の錯誤があるとしても、故意が阻却されることはありません。
本判例も、「被害者には被告人の命令に応じて自殺する気持ちはなかったものであって,この点は被告人の予期したところに反していたが,被害者に対し死亡の現実的危険性の高い行為を強いたこと自体については,被告人において何ら認識に欠けるところはなかったのであるから,上記の点は,被告人につき殺人罪の故意を否定すべき事情にはならない」と判示しています。
なお、被告人は、殺人罪の実行行為性、死の結果、因果関係のいずれも認識がある以上、あてはめの錯誤とは言っても、違法性の意識を欠くことに相当の理由があるとも言えないので、前記下級審裁判例の考え方を採用しても、やはり殺人未遂罪の成立に影響を生じないでしょう。
以上のとおり、本判例は、被告人に殺人罪の実行行為性および故意を認め、殺人未遂罪が成立するとしています。
参考文献
刑法判例百選(第7版)148ページ
司法試験は情報戦だ!!
司法試験の論文式試験対策についてもっと詳しく知りたい方は、「論文で半分ちょい」が合格のカギ!司法試験の合格ストラテジー【初学者向け】もぜひチェックしてみてください。
この記事では、司法試験の論文式試験で「目指すべき得点」や、効果的な勉強法について詳しく解説しています。特に、初学者でも理解しやすいように工夫されていますので、これから司法試験を目指す方には必見です。
この記事の内容はこんな方におすすめ!
この記事で分かること
詳しくは以下の記事をご覧ください!司法試験合格への道がぐっと近づくはずです。
▼司法試験受験生なら必読▼
この記事が気に入ったら
フォローしてね!
判例学習を“見える化”しよう!
事案図解で理解と記憶に革命を。
複雑な判例も、図で整理すれば驚くほどスッキリ頭に入る。
「判例事案図解キット」は、登場人物・組織を示す「人・組織アイコン」と、事案の流れを補足する「その他アイコン」がセットになった、スライド形式の図解ツールです。
これらのアイコンを組み合わせて配置するだけで、判例の構造を視覚的に整理・再現することが可能。
もちろん、手書きの整理も有効ですが、スライドとして一度しっかり図解しておけば、後から見返したときの理解度と復習効率が段違いです。
とくに「これは絶対に押さえておきたい!」という重要判例については、このキットを活用して、自分だけのオリジナル事案図を作ってみてください。
「視覚で学ぶ」という新しい判例学習のかたち、ぜひ体験してみてください。
▼法スタ公式LINE登録で限定配布中▼
法スタ運営事務局です。司法試験合格者監修の下、法律を勉強されているすべての方向けにコンテンツの制作をしております。
法律書籍専門の口コミサイト「法書ログ」、法科大学院の口コミサイト「#ロースクールはいいぞ」を運営しております。