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株主名簿に名前があるのに、新株をもらえない!?
―名義書換制度の本質を問う重要判例、最高裁昭和41年7月28日判決を徹底解説―
司法試験・予備試験の会社法で、よく出題される「株式の名義書換制度」。
この制度を理解するうえで避けて通れないのが、今回取り上げる最高裁昭和41年7月28日判決(百選13事件)です。
📌「株式を譲ったのに、新株が自分に割り当てられた!?」
📌「名義書換えをしなかったのは会社の過失だったら?」
📌「それでも株式譲渡人を株主として扱えるのか?」
この判例は、そんなリアルなトラブルを題材に、「名義書換制度の趣旨」や「信義則による制約」など、司法試験の論文でも問われやすい重要論点を含んでいます。
この記事では、判例の背景・要点から、名義書換制度の基本・応用論点まで、司法試験・予備試験受験生の視点からやさしく・深く解説していきます。
論証例に頼らない“本質理解”を目指す皆様へ。
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(1)Y会社(被告・被控訴人・被上告人)は、その取締役会において、株主名簿に記載されている株主に対し、1株につき新株2株を割り当てる旨の新株発行を決議しました。
↓
(2)もっとも、これに先立ち、Y会社の株主であるX(原告・控訴人・上告人)は、自己の株式をAに譲渡していました。その際、AはY会社に株式名簿書換請求をしましたが、Y会社の過失により書換は行われませんでした。
↓
(3)そして、基準日当時もXが株主として株式名簿に記載されていたため、Y会社は、Xに対し新株割当ての通知をし、Xはこれを受けて新株の申込み及び払込みをしました。
↓
(4)しかし、Y会社は新株をAに割り当てたため、XはY会社に対して本件新株の交付を求めて提訴しました。
➡簡単に言えば、株式譲渡の名義書換えを怠ったY会社が、株式譲渡人Xではなく株式譲受人Aに新株を割り当てたため、株主名簿に株主としての記載があるXが自分に新株を割り当てろ!と怒った事案です。
何とも理不尽な主張のように思えますが..果たしてXの請求は認められるのでしょうか?
本判決を見ていく前に、名義書換制度について復習しましょう!
会社は、株主名簿を作成し、①株主の氏名又は名称及び住所、②当該株主の保有株式数・種類、③当該株主の株式取得日、④株券発行会社の場合は当該株式に係る株券の番号を記載又は記録しなければならない(会社法121条)とされています。
(株主名簿)
第百二十一条 株式会社は、株主名簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下「株主名簿記載事項」という。)を記載し、又は記録しなければならない。
一 株主の氏名又は名称及び住所
二 前号の株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
三 第一号の株主が株式を取得した日
四 株式会社が株券発行会社である場合には、第二号の株式(株券が発行されているものに限る。)に係る株券の番号
では、名義書換えとは何だったでしょうか?
これは、簡単に言えば、株式譲渡の対抗要件です。
民法の債権譲渡における通知・承諾(民法467条1項)みたいなものと考えれば理解しやすいでしょう。株式譲渡人に対しては、名義書換えがなくても株式を譲り受けたことを対抗できますが、会社やその他の第三者に対しては、名義書換えがないと株式を譲り受けたことを対抗できない(会社法130条1項)とされています。
(株式の譲渡の対抗要件)
第百三十条 株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。
2 株券発行会社における前項の規定の適用については、同項中「株式会社その他の第三者」とあるのは、「株式会社」とする。
この名義書換えがされない間は、会社は原則として、その株式の株主として株主名簿に記載又は記録されている者を株主として扱えば足りるということになっています。
なぜこのような制度ができているのでしょうか?
名義書換制度の趣旨は、日々変動しうる株主の権利行使を会社が円滑に処理することにあるとされています[1]。
株主は、規模の大きい公開会社では数十万人にのぼることが通常であり、会社が株主の個別の株式譲渡を逐一把握することは困難です。そのため、議決権等の株主権を行使することができるのは誰なのかを株主名簿を用いて画一的に処理することで、会社の便宜を図ろうということです。
名義書換制度の趣旨は名義書換えに関する会社法上の論点の多くで引用されますので、この機会に覚えておきましょう!
次に、株式譲渡承認と名義書換えの関係について理解しましょう!これは結構誤解しやすいので注意が必要です。
まず、譲渡制限会社(非公開会社)においては、株式譲渡をするためには、会社の株主総会(取締役設置会社では取締役会)の承認決議が必要です(会社法139条)。
(譲渡等の承認の決定等)
第百三十九条 株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2 株式会社は、前項の決定をしたときは、譲渡等承認請求をした者(以下この款において「譲渡等承認請求者」という。)に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。
会社の承認を得ない譲渡制限株式の譲渡は、譲渡の当事者間においては有効ですが、会社に対する関係では効力を生じないとされています(最判昭和63年3月15日判時1273号124頁)。これは、対抗要件とは別物です。
会社に対する関係で効力を生じていないので、会社は株式譲受人を株主として扱ってはならないこととなります。また、譲受人は名義書換えを請求し、対抗要件を備えることもできません(会社法134条柱書本文)。
(株主の請求による株主名簿記載事項の記載又は記録)
第百三十三条 株式を当該株式を発行した株式会社以外の者から取得した者(当該株式会社を除く。以下この節において「株式取得者」という。)は、当該株式会社に対し、当該株式に係る株主名簿記載事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。
2 前項の規定による請求は、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載され、若しくは記録された者又はその相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない。
第百三十四条 前条の規定は、株式取得者が取得した株式が譲渡制限株式である場合には、適用しない。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 当該株式取得者が当該譲渡制限株式を取得することについて第百三十六条の承認を受けていること。
二 当該株式取得者が当該譲渡制限株式を取得したことについて第百三十七条第一項の承認を受けていること。
三 当該株式取得者が第百四十条第四項に規定する指定買取人であること。
四 当該株式取得者が相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者であること。
一方で、名義書換えはあくまで対抗要件であり、会社に対して株式譲渡の効力が生じていることが議論の前提です。
そのため、譲渡制限会社でない場合は、株式譲渡自由の原則から、株式譲渡は原則として会社に対して効力が生じることとなるため、株式譲渡の有効性は問題とならず、名義書換えがあり対抗要件が備わっているか否かのみが問題となります。
しかし、譲渡制限会社の場合、譲渡の承認がなされ、株式譲渡の効力が会社に対して生じているかがまず問題となり、承認があって会社に対しても効力が生じている場合にのみ、名義書換えの有無が問題となります。
また、名義書換えが対抗要件にすぎないことから、会社の方から名義書換えをしていない株式譲受人を株主として扱い、株式譲渡人をもはや株主として扱わないとすることもできます(最判昭和30年10月20日民集9巻11号1657頁)。
(3)このように、株式譲渡承認と名義書換えは段階の異なる問題であるということに注意してください。問題を解く際には、①株式譲渡の効力が会社に対して生じているか、②名義書換えにより対抗要件が備わっているか、を区別して論じるようにしましょう!
以上のことを前提に、本判決について見ていきましょう!
本判決の争点は、会社の過失により名義書換えを怠った場合、会社は株式譲渡人を株主として扱わなければならないか、です。
これが肯定された場合、本件では、株主名簿に株主として記載されている株式譲渡人Xを株主として扱わなければならないため、Y会社が株式譲受人Aに新株を割り当てたことには瑕疵があることとなり、問題となりました。
本判決は、以下のように判示して、Xの上告を棄却しました。
「正当の事由なくして株式の名義書換請求を拒絶した会社は、その書換のないことを理由としてその譲渡を否認し得ないのであり(大審院昭和三年七月六日判決、民集七巻五四六頁参照)、従つて、このような場合には、会社は株式譲受人を株主として取り扱うことを要し、株主名簿上に株主として記載されている譲渡人を株主として取り扱うことを得ない。そして、この理は会社が過失により株式譲受人から名義書換請求があつたのにかかわらず、その書換をしなかつたときにおいても、同様であると解すべきである。」
➡このように、最高裁は、会社の過失により名義書換えを怠った場合、会社による名義書換えの不当拒絶の場合と同様、株式譲受人を株主として扱わなければならず、株式譲渡人を株主として扱うことはできないとしました。
そのため、本件では、Y会社が株式譲渡人Xを株主として扱うことはできず、株式譲受人Aに対して新株を割り当てたことに瑕疵はないとされました。
これは、名義書換えの不当拒絶が会社の便宜という制度趣旨を逸脱したものであり、信義則(民法1条2項)上、会社は名義書換未了の株主の権利行使を拒むことはできない[2]のと同様に、会社の過失により名義書換えを怠ったにも関わらず名義書換未了の株主の権利行使を拒むことは信義則に反するという考え方に基づくものと思われます。
名義書換制度の趣旨や信義則が用いられていることを押さえておきましょう!
今回は、会社の過失による名義書換の未了と株式譲受人の地位に関する判例について見ていきました。
名義書換えに関する論点は今後の司法試験で出題可能性が高い論点ですので、しっかりと理解しておきましょう!
名義書換制度について詳しく学びたい方は、「Legal Quest 会社法 第4版」のP109~の解説がおすすめです。
・伊藤靖史・大杉謙一・田中亘・松井秀征「Legal Quest 会社法 第5版」(2021)
・会社法判例百選〔第4版〕別冊ジュリスト第254号(2021)
[1] 伊藤靖史・大杉謙一・田中亘・松井秀征「Legal Quest 会社法 第5版」(2021)109頁。
[2] 土田亮「会社の過失による名義書換の未了と株式譲渡人の地位」会社法判例百選〔第4版〕別冊ジュリスト第254号(2021)30頁。
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法律記事を書いております、橋籠(ばしろう)です。現在は、国立大学法科大学院に在籍しながら、主に会社法の判例の解説記事を執筆しております。
自分が司法試験の勉強をしている上で必要だと思った知識を中心に執筆しております。初学者の方にも分かりやすいような解説記事を目指しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。