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宮入バルブ事件(東京地決平成16年6月1日)はどんな事件?
上場企業が行った株式の第三者割当てを巡り、その発行価額が「特に有利な金額」に該当するかが争点となった重要は裁判例です。
本決定では、株主総会の特別決議を経ずに、当時の市場価格よりもはるかに低い価格で株式が発行されたことに対し、株主たちが新株発行の差止めを求めて提訴しました。
この事件は、募集株式の発行における「公正な発行価額の判断基準」や、「会社法の趣旨である既存株主の利益保護をどのように解釈すべきか?」について重要な示唆を与えています。
本記事では、事件の概要や判決の論理を紐解きながら「募集株式の有利発行」に関する法的論点を詳しく解説します。
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では、事案をご紹介いたします!
X1~X4(原告)は、上場会社であるY株式会社の株式を保有する株主であり、Y社の定時株主総会において、取締役5名及び監査役1名の選任を求める株主提案を行いました。これに対し、Y社は、取締役会において、第三者Aに対し、株式を1株の「発行価額393円」で発行する旨の決議を行いました。
もっとも、この発行価額は、当該決議の前日におけるY社株式の1株の市場価格であった1010円、及び同日から遡って6か月間の平均株価であった721円67銭よりもかなり低い額でした。
そこで、Xらは、本件発行価額は「特に有利な金額」(会社法199条3項)であるにもかかわらず、株主総会の特別決議(199条3項、201条1項、309条2項5号)を経ていないとして、新株発行差止めの仮処分(210条、民事保全法23条2項)を申し立てました。
今回、株主Xらは、この発行価額が会社法で定める「特に有利な金額」にあたるにもかかわらず、株主総会の特別決議を経ていないことを問題視し、新株発行の差止めを求めました。
それでは、「募集株式」について知識を整理してみましょう。
「株式会社」は、資金調達のために「株式」という金融商品を販売することができます。この「株式」を引き受ける者を募集し「株式」を発行することを「募集株式の発行」と言います。
会社は「株式」を新しく発行して、誰かに買ってもらうことで、お金を集めることができるんですね!
「募集株式の発行」は具体的に以下の方法があります。
「募集株式の発行」の方法
「株主割当て」とは、すべての株主にその持株割合に応じて株式を割り当てる方法をいいます。
「公募」とは、不特定の者に株式引受けの勧誘をして株式を割り当てる方法をいいます。
「第三者割当て」とは、特定の第三者(既存株主も含む)に対して「株式」を割り当てる方法をいいます。今回の事例では、「第三者割当て」が問題となりました。
この事件は「第三者割当て」が問題になりました!
株式会社が「募集株式」の発行を行う場合、まず「募集事項の決定(199条1項)」をする必要があります。具体的に、以下などがあげられます(会社法199条1項各号)。
≪決定する必要がある「募集事項」とは?≫
・募集株式の数(1号)
・募集株式の払込金額又はその算定方法(2号)
・払込期日又は期間(4号)
まず「どんな株を、いくらで、いつまでに?」を決めるんだね!
これらの事項の決定は「非公開会社」で、株主の持株比率維持の要請があることから、原則として株主総会の特別決議によらなければなりません(309条2項5号、199条2項)。
もっとも「公開会社」においては、募集事項の決定を株主総会ではなく取締役会の決議により決定することができます(201条1項、199条2項)。
「募集事項」の決定方法(原則)
・非公開会社:株主総会の特別決議により決定
・公開会社:取締役会の決議により決定
公開会社であっても、払込金額が「特に有利な金額」である場合には、そのような払込金額を含めた募集事項の最終的な決定は株主総会の特別決議を経なければなりません(201条1項、199条3項)。
さらに、取締役は、当該株主総会において、払込金額を「特に有利な金額」とすることを必要とする理由を説明しなければなりません(199条3項)。
これは、以下趣旨によるものです[1]。
株主割当て以外の方法により「特に有利な金額」による募集株式の発行(有利発行)がなされると、
第三者が既存株主よりも格安で株式を手に入れることができ、既存株主の株式価値が希釈化されて経済的な不利益を被るため、そのような有利発行は既存株主から同意を得て行うべきである
安く株を売ると、特定の人が得をして、今まで株を持っていた人(既存株主)は損をします。
だから、そんな大事なことは、みんなの同意を得てからやろう!というルールですね。
募集事項の決定がなされた後は、申込み(203条)と割当て(204条)の手続を経て、当該募集株式の引受人が決定されます(205条の場合を除く)。
その後、引受人が出資の履行(208条)をすることによって、引受人は当該募集株式の株主となり(209条)、募集株式の発行が完了します。
今回の事案で、1株「発行価額393円」の発行は、特に有利な金額か?が問題となりました。
当該決議の前日における市場価格は1株1010円でした。また、同日から遡って6か月間の平均株価は721円67銭でした。
これらの価格と比較し、393円というのは、かなり低い額だったということが分かるぞ!
この点について、本決定は以下のように規範を定立しました。
『特ニ有利ナル発行価額』とは,公正な発行価額よりも特に低い価額をいうところ,株式会社が普通株式を発行し,当該株式が証券取引所に上場され証券市場において流通している場合において,
新株の公正な発行価額は,旧株主の利益を保護する観点から本来は旧株の時価と等しくなければならないが,新株を消化し資本調達の目的を達成する見地からは,原則として発行価額を時価より多少引き下げる必要もある。
そこで,この場合における公正な発行価額は,発行価額決定前の当該会社の株式価格,上記株価の騰落習性,売買出来高の実績,会社の資産状態,収益状態,配当状況,発行済株式数,新たに発行される株式数,株式市況の動向,これらから予測される新株の消化可能性等の諸事情を総合し,旧株主の利益と会社が有利な資本調達を実現するという利益との調和の中に求められるべきものである。
もっとも,上記の公正な発行価額の趣旨に照らすと,公正な発行価額というには,その価額が,原則として,発行価額決定直前の株価に近接していることが必要であると解すべきである(最高裁判所昭和50年4月8日第三小法廷判決・民集29巻4号350頁参照)。
判断するには、以下のポイントを見ていく必要があります。
「特に有利な金額」か?を判断するポイント
ポイント①「発行を決める直前の株価」に近い値段か?(原則)
ポイント②「多様な事情」を考慮して判断されたか?(①も考慮)
ポイント③「多様な事情」や「発行を決める直前の株価」を考慮した「公正な発行価額」よりも特に低い価額か?(①②も考慮)
ポイント①は原則です。②には①が含まれており、③は②と①を踏まえた結論です。
(参考)ポイント②を決めるための要素(多様な事情)
・株式価格
・株価の騰落習性
・売買出来高の実績
・会社の資産状態
・収益状態
・配当状況
・発行済株式数
・新たに発行される株式数
・株式市況の動向
・これらから予測される新株の消化可能性
ポイント①はあくまで原則であり、例外もあります。
例えば、会社の敵対的買収者等が当該会社の株式の買占めや株価高騰を狙った異常な投機を行い、株価が一時的に高騰し、株価と企業価値が乖離しているといえるような場合には、①は適用されず、発行決議直前の株価を公正な発行価額の判断要素から除外することが認められます。
一時的に高騰しているだけだったら、その時の株価は、「公正な発行価額」を考えるときに無視してもOKということだね!
この点について、今回の事件でY社側は「Xらの買占めにより発行決議直前の株価が高騰していたこと」を主張しています。
本決定の「当てはめ」部分について見ていきます。
本決定は、まず、発行価額が発行決議直前の株価と比較して約39%しかないことを指摘した上で、先ほどの「ポイント②」における多様な事情を抽出・検討し、株価の高騰が一時的なものではないと判断しました。
そのため、発行決議の直前日である株価やそれ以前の相当期間内における株価を公正価額の判断要素から除外すべきでないとして、Y社の募集株式の発行価額は公正な発行価額より特に低い金額である、すなわち「特に有利な金額」であると認定し、Xらの請求を認容しました。
ここで、債権者とはXら、債務者とはY社を指します。
本件発行価額393円は,平成16年5月17日時点の証券市場における1株あたりの株価1010円と比較して約39パーセントにすぎない。
債権者らによる大量の株式取得が,債務者株式の証券市場における株価に影響を与えていることは否定できない」が、「債権者らは債務者への経営参加や技術提携の要望を有しており,債務者に対する企業買収を目的として長期的に保有するために株式を取得したものであることが窺われ,…債権者らが不当な肩代わりや投機的な取引を目的として株式を取得したものと認めるに足りる資料はない。
また,…債務者の業績も改善していること,…債務者と同様にバルブ事業を営む企業においても,昨年後半から今年にかけて株価が2倍ないし4倍に高騰している事例があること…が認められ,…債務者株式の株価の上昇が一時的な現象に止まると認めることはできない。
そうすると,本件において,公正な発行価額を決定するに当たって,本件新株発行決議の直前日…の株価,又は本件新株発行決議以前の相当期間内における株価を排除すべき理由は見出しがたい。
当てはめのポイントは以下、すなわち「ポイント②」が関わってきます。
公正な発行価額をいかに説得的に算定するか?
問題文に株式の時価に関する事情があった場合には、「当該時価が公正価額といえるか?」について説得的に論じることができれば、高得点につながるでしょう。
今回は上場会社における募集株式の有利発行について見ていきました。
募集株式の有利発行は司法試験・予備試験において頻出論点であり、よく学習する必要があります。募集株式の有利発行や手続面について詳しく学びたい方は、「Legal Quest 会社法 第4版」のP323~の解説がおすすめです。
・伊藤靖史・大杉謙一・田中亘・松井秀征「Legal Quest 会社法 第5版」(2021)
・会社法判例百選〔第4版〕別冊ジュリスト第254号(2021)
[1] 伊藤靖史・大杉謙一・田中亘・松井秀征「Legal Quest 会社法 第5版」(2021)327頁。
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法律記事を書いております、橋籠(ばしろう)です。現在は、国立大学法科大学院に在籍しながら、主に会社法の判例の解説記事を執筆しております。
自分が司法試験の勉強をしている上で必要だと思った知識を中心に執筆しております。初学者の方にも分かりやすいような解説記事を目指しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。