民法に定められていた親権者の懲戒権に関する規定が、近年の社会的な要請を踏まえて見直されました。
児童虐待防止や子どもの権利を尊重する観点から行われた今回の改正は、親権者の役割や責任を再定義し、現代社会に即した内容となっています。
司法試験の学習においては、改正趣旨や具体的な規定内容を正確に理解しておくことが重要です。
目次
1. 懲戒権に関する規定の削除
旧民法822条
親権を行う者は、第八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる
従来、民法第822条には親権者が子を懲戒する権利(懲戒権)が明記されていました。この規定は以下の理由で削除されました。
- 体罰の正当化を防止: 懲戒権を根拠に親権者が体罰を行うことが法律上正当化される余地を排除するため。
- 児童虐待の防止: 懲戒権が児童虐待の根拠として利用される恐れがあったため。
懲戒権の削除、新民法821条により、親権者の権利として子に対する体罰は禁止されました。
2. 親権者の行為規範の明確化
新民法821条
(子の人格の尊重等)
第八百二十一条 親権を行う者は、前条の規定による監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。
親権を行う者は、前条の規定による監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。
改正民法では、親権者が子を監護・教育する際に遵守すべき行為規範が明確に示されました。具体的には、以下の点が新たに規定されています。
- 子の人格の尊重
- 親権者は、子どもの独立した人格を持つ存在として尊重し、対応することが求められます。
- 年齢および発達段階への配慮
- 子の年齢や発達段階に応じた適切な監護・教育を行う義務が明記されました。
- 体罰等の禁止
- 子の心身の健全な発達に有害な影響を与える行為、特に体罰は法律上明確に禁止されています。
これにより、親権者の行為が子どもに与える影響について、より高い倫理的・法的責任が課されることになりました。
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3. 改正の背景と趣旨
懲戒権に関する規定(改正前民法第822条)が、児童虐待を正当化する口実になっているとの指摘がありました。
- 児童虐待防止の観点
日本国内で増加している児童虐待事例への対応として、親権者の懲戒権を削除し、体罰の全面禁止を明文化する必要がありました。
- 国際的な要請
国連児童の権利条約を踏まえ、子どもの権利を尊重し、暴力のない教育環境を整備するための立法措置が求められていました。
試験対策ポイント
- 改正趣旨の理解
- 懲戒権が削除された背景や、子の人格の尊重、体罰の禁止に関する趣旨をしっかりと押さえましょう。
- 具体的規定内容の確認
- 改正民法第821条の内容(親権者の行為規範)を正確に理解し、具体的事例への適用を練習しておくことが重要です。
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まとめ
懲戒権の見直しは、親権制度を児童虐待防止の観点から再構築する重要な改正です。
短答式試験では、改正趣旨の理解、具体的な条文適用の検討、が問われる可能性があります。条文の読解と実務上の意義を深く理解し、適切に議論できる力を養いましょう。
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