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刑法の学習において、「中止犯(中止未遂)」という概念は、試験でも頻出でありながら、イメージしにくい論点の一つです。
今回ご紹介する福岡高裁昭和61年3月6日判決は、まさにこの“中止犯の成否”が真正面から争われた重要判例です。
被害者の頸部をナイフで突き刺し、一命を取り留めるかどうかという瀬戸際で、加害者がとった行動とは——。
そして、その行動に「真摯な努力」と「任意性」が認められるのか。
「中止犯」の要件を整理しながら、「判例の射程」と「学びどころ」を丁寧に解説していきます。
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「中止犯(中止未遂)」の成否が問題となった裁判例として、福岡高等裁判所昭和61年3月6日判決(以下「本判例」と言います。)があります。
この判決は、被告人が、A(被害者)の頸部を果物ナイフで刺し、加療約8か月の重傷を負わせた殺人未遂事件の事案です。
本件被告人は、Aと口論になり、Aの頸部を果物ナイフで1回突き刺し、その傷は深さ5センチメートルで気管に達するほどでした。
この刺傷により、Aが大量の血を吐き出したのを見た被告人は、驚愕すると同時に大変なことをしたと思い、Aの頸部にタオルを当てるなど介抱するとともに、自ら消防署に傷害事件を起こした旨を通報しました。
被告人は、消防署員とともにAを担架にのせて救急車に運び、駆け付けた警察官にAをナイフで刺した旨を告げて現行犯逮捕されました。
Aは、消防署員や医師の処置により、加療約8か月の重傷ではあったものの、一命を取り留めました。
この事案につき、本判例の原審は、被告人の行為は殺人の障害未遂であると認定し、中止犯(中止未遂)の規定(刑法43条ただし書き)を適用しませんでした。
この原審に対し、被告人側が控訴したのが、本判例です。
争点はなんですか?
本判例では、殺人の故意(殺意)の有無も争われていますが、重要な争点は「中止犯(中止未遂)」が成立するか否かです。
重要な争点
「中止犯(中止未遂)」が成立するか否か?
「中止犯(中止未遂)」とは、犯罪の実行に着手したものの「自己の意思により犯罪を中止」することです。
中止犯(中止未遂)とは?
犯罪の実行に着手したものの、「自己の意思により犯罪を中止」すること(刑法43条ただし書き)
これに対し、自己の意思によって犯罪を中止したことにより犯罪の結果が発生しなかったのではなく、客観的・外部的障害によって犯罪の結果が発生しなかった場合を、「障害未遂」と言います(刑法43条本文)。
「中止犯」が成立すると、刑が必要的に減免されます。刑の「必要的減免」とは、一定の事由がある場合に、必ず刑が減刑または免除されることを言います。
これに対し、「障害未遂」にすぎない場合は「必要的減免」はされず、「任意的減免」にとどまります。「任意的減免」とは、裁判官の判断によって、減免するかどうかが決められることを意味します。
「任意的減免」の場合は、裁量によりますから、減免されないこともあります。そのため、「必要的減免」であるか「任意的減免」であるかは、量刑において重大な意味を持ってきます。
「中止犯(中止未遂)」も「未遂犯」ですから、犯罪の実行に着手していることおよび犯罪の結果が発生しなかったことが必要となります。
その上で、「中止犯」が成立するには、さらに以下の要件が必要です。
「中止犯」が成立するには、犯罪の中止を「自己の意思により」行ったことが必要となります。「任意性」の要件と呼ばれています。
この「自己の意思により」の意味をどのように解釈するべきかについては、争いがあります。
主要な学説は、以下のとおりです
判例がどの説を採用しているかは、明確にはされていません。
「限定主観説的」に、反省や悔悟などを認定した上で「中止犯」の成立を認めたものもあれば、「客観説的」に行為者の認識した事情が行為者の主観にどのような影響を及ぼすかを客観的に判断した上で任意整理を否定したものもあります。
そのため、判例は「限定主観説」と「客観説」を二元的に採用していると言われています。
「中止犯」が成立するには、自己の意思により「犯罪を中止した」こと(中止行為)が必要となります。
この「中止行為」には、「着手未遂」と「実行未遂」があります。
「着手未遂」とは、犯罪の実行行為に着手したものの、実行行為の完了前に中止行為をしたことを言います。他方、実行行為の完了後に中止行為をした場合は、「実行未遂」と呼ばれています。
中止行為の種類
着手未遂:犯罪の実行行為に着手したものの、実行行為の完了前に中止行為をした場合
実行未遂:実行行為の完了後に中止行為をした場合
「着手未遂」の場合には、まだ実行行為が完了していません。そのため、実行行為を中止する不作為のみで「中止行為」となります。
これに対し、「実行未遂」の場合には、すでに実行行為は完了してしまっています。そのため、結果の発生を防止するために積極的な作為をしなければ、「中止行為」に該当しません。
「中止行為」に「真摯な努力」を払ったことが必要か否かについては、これを必要とする説(必要説)と不要とする説(不要説)があります。
判例には、真摯な努力を必要とするものが多く、必要説を採用していると解されています。
本判例は、殺意を認定した原審を支持し、控訴審における弁護人の主張を排斥しています。
他方「中止犯(中止未遂)」の成否については、「中止犯」の成立を否定した原審と異なり、「中止犯」の成立を認め、「破棄自判」しています。
「破棄自判」とは、原審判決を破棄した上で、審理を第一審に差し戻さず、控訴審自ら判決をすることを言います。
以下、本判例における「中止犯」に関する判断について解説します。
解説で詳しく見ていくぞ!
前記のとおり「中止犯(中止未遂)」の要件として、「犯罪を中止した」こと(中止行為)が必要です。これについて、本判例は、以下のように判断しています。
本判例は「中止犯(中止未遂)」における中止行為について、
「実行行為終了前のいわゆる着手未遂においては、実行行為を中止すること自体で足りるが、
実行行為終了後のいわゆる実行未遂においては、自己の行為もしくはこれと同視できる程度の真摯な行為によって結果の発生を防止することを要すると解すべき」
としています。
前記のとおり、中止行為には「着手未遂」と「実行未遂」の区別があるところ、本判例もその区別を認め、それぞれについて必要とされる行為の程度について規範を立てています。
本判例の規範は、以下のとおりです。
また、中止行為に「真摯な努力」を要するのかについて、本判例は、「自己の行為もしくはこれと同視できる程度の真摯な行為」であることを求めており、真摯な努力必要説の立場に立っていると解されます。
本判例は、本件被告人の行為について、2度、3度と続けて攻撃を加えることを意図していたものではなく、Aの頸部をナイフで1回突き刺したことにより、に失血死、窒息死の危険を生じさせていることから、「実行未遂」の事案であると認定しています。
つまり、1回のナイフによる刺突によって、殺人罪の結果発生の現実的な危険性が生じている以上、その刺突によってすでに殺人の実行行為は完了しているから、「実行未遂」であるとしているのです。
その上で、被告人が、実行行為後に、Aが死に至るのを防止するため、消防署に救急車を要請し、頸部にタオルを当てて止血を試みるなど真摯な努力を払い、この努力と消防署員や医師の早期かつ適切な措置があいまって、Aの死の結果を回避したと言えるので、「中止行為」に該当すると認定しています。
上記被告人の救護行為という被告人自身の「自己の行為」によって、結果の発生を防止していることから、「中止行為」に該当すると判断しています。
前記のとおり、「中止犯(中止未遂)」が成立するには、中止行為が「自己の意思により」されたものであること(任意性)が必要となります。
これについて、この判例では、次のように判断しているぞ!
本判例は、任意性について、
「外部的障碍によってではなく、犯人の任意の意思によってなされることをいうと解すべき」
としつつも、
「中止行為が流血等の外部的事実の表象を契機とする場合のすべてについて、いわゆる外部的障碍によるものとして中止未遂の成立を否定するのは相当ではなく、外部的事実の表象が中止行為の契機となっている場合であっても、
犯人がその表象によって必ずしも中止行為に出るとは限らない場合に敢えて中止行為に出たときには、任意の意思によるものとみるべきである」
との規範を立てています。
これは、「任意性」の判断基準について、行為者の認識した事情が社会通念上犯行の障害になるものか否かを「任意性」判断の基準とする客観説の立場に立っていると解されています。
また、本判例は、規範の当てはめにおいて、「反省、悔悟の情などから、任意の意思に基づいてなされた」との認定をしています。
これは、本判例が、「客観説」に加えて、広義の悔悟があることを「任意性」の判断基準とする「限定主観説」の立場も採用していると解されています。
本判例は、本件被告人が「中止行為」に出た契機は、Aが多量の吐血をしたことにあるとしつつも、被告人がAを放置したまま逃走することも考えられ、通常人であれば、多量の吐血を見たからと言って、被告人のような救護活動をするとは限らないと判示しています。
そして、被告人が、Aの流血を見て驚愕するとともに、「大変なことをした」との思いから「中止行為」に出たものであるところ、この「大変なことをした」との思いには、反省。悔悟の情が込められているとも判示しています。
その上で、
「本件の中止行為は、流血という外部的事実の表象を契機としつつも、犯行に対する反省、悔悟の情などから、任意の意思に基づいてなされたと認めるのが相当である」
と結論付けました。
前記のとおり、本判例は「客観説」に寄った基準を採用しつつも、「限定主観説的」な基準も併用しています。
Aの流血等という外部的事実の表象が契機になっているものの、逃走したりするなど救護活動をするとは限らないにもかかわらず、被告人があえて、救護活動などの中止行為をしており、
また、それが反省、悔悟の情に基づくものであることから、「任意性」の要件を満たしていると判断しています。
以上のとおり、本判例は、本件被告人について、「自己の意思により犯罪を中止した」ものとして、中止犯の成立を認めました。
参考文献
刑法総論判例50!(著:十河太郎ほか、有斐閣)106頁
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