これから司法試験の勉強を始めようと考えている皆さんへ。司法試験と聞くと、たくさんの法律科目を勉強しなければならない大変な試験というイメージがあるかもしれません。しかし、どのような科目を、どのような形式で受験するのかを正確に把握することは、効率的な学習計画を立てる上で非常に重要です。
この記事では、司法試験の試験科目について、これから司法試験の対策を始める方にも分かりやすく解説します。
目次
司法試験の全体像
現在の司法試験は、法科大学院の課程を修了した者、または司法試験予備試験に合格した者に受験資格が与えられます。司法試験は、裁判官、検察官または弁護士(これらを「法曹三者」と呼びます)となるために必要な学識や応用能力を判定する国家試験です。
司法試験は、短答式試験と論文式試験の2つの試験形式で実施されます。予備試験と違い、司法試験では論文式試験に続けて短答式試験が行われます。
短答式試験の科目と内容
短答式試験は、マークシート方式で解答する試験です。司法試験の短答式試験の科目は以下の3つです4。
配点は、民法が75点満点、憲法と刑法がそれぞれ50点満点となっています。
短答式試験の出題形式には科目ごとに特徴があります。
憲法では、出題された各肢全てについて正誤判定を行い、全てをマークする必要がある形式や、各肢の正誤の正しい組み合わせを一つ選ぶ形式があります。
令和6年司法試験 憲法 第2問
令和6年司法試験 憲法 第3問
民法では、複数の肢の中から正しい(または誤っている)ものの組み合わせを選択する形式や、複数の肢の中から正しい(または誤っている)ものを1個または2個選択する形式があります。
令和6年司法試験 民法 第4問
刑法では、会話の空欄に語句群の中から適切なものを選ぶ形式もあります。
令和6年司法試験 刑法 第9問
論文式試験の科目と内容
論文式試験は、事例問題に対する解答を文章で記述する試験です。司法試験の論文式試験の科目は以下の8つです。
- 憲法
- 行政法
- 民法
- 商法
- 民事訴訟法
- 刑法
- 刑事訴訟法
- 選択科目
論文式試験は、各科目が100点満点です。試験時間は通常1科目あたり2時間ですが、選択科目は2問で3時間となります。
論文式試験の出題内容は予備試験と同じく事例問題ですが、問題文の長さが予備試験に比べて格段に多いという特徴があります。書くべき答案の枚数は上限8枚、試験時間は2時間(選択科目は2問で3時間)と多くなります。
行政法や民事訴訟法では、法律事務所の会議録や修習生と教官との会話をガイドラインとして答案を書く独特な出題方式が採用されることもあります。
刑事系の多くの問題では、「以下の事例に基づき,甲及び乙の罪責について論じなさい」のように、長い事案を自分で分析し、事実から法的な論点を抽出する能力が求められます。近年では、より論点を絞った論述や反対の立場からの論述が求められることもあります。
事案の登場人物の相関図を簡単に書くことや、事案に沿って事実評価をすることも重要です。
論文式試験の選択科目
論文式試験では、基本となる法律科目(憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法)に加えて、以下の8科目の中から1科目を選択して受験します4…。
労働法:労働に関する様々な法律に関する科目で、選択者の多さNo.1の人気科目です。
経済法:主に独占禁止法という法律の理解を問う科目です。
倒産法:破産法と民事再生法という民事系科目との関連が強い分野です。
知的財産法:特許権や著作権といった知的財産権を保護する法律に関する科目です。
租税法:税に関する法律に関する科目で、所得税法がメインの出題範囲となります。
国際関係法(公法系):国家間で生じる紛争や問題に関する解決策を答える問題が出題されます。
国際関係法(私法系):私人間における国際的な紛争の解決の場面で使用される法律に関する科目です。
環境法:環境保全に関する法律分野を扱う科目です。
選択科目の選び方は、合格を左右する重要な要素の一つです。選ぶ際の考慮要素としては、以下の6つが考えられます。
1 必要な勉強量・時間:科目によって勉強量が異なります(例:労働法や倒産法は多い、国際関係法(私法系)や経済法は比較的狭い)
2. 興味があるか:興味がない科目だと学習が苦痛になりやすいため、簡単な入門書などで概観を確認し、興味を持てるか確認することが大切です。
3. 教材・講座が充実しているか:受験者が多い科目(例:労働法)は教材や予備校の講座が充実している傾向があります。
4. 求められる能力:労働法や知的財産法は暗記量が多く、経済法は暗記よりあてはめ重視など、科目によって求められる能力が異なります17。過去問や再現答案を見て、自分の能力を活かせる科目を選ぶのがおすすめです。
5. 実務に出た場合に使うか15…:将来希望する分野(例:特許関係)で使う可能性のある科目を選ぶ人もいます17。労働法は弁護士になった場合に法律相談を受けることが非常に多いため、選択者が多い理由の一つと考えられます。
6. 選択している受験者の割合:受験者が多ければ、自主ゼミや情報交換がしやすいというメリットがあります。
▼選択科目の選び方のコツを解説▼
法スタ
【司法試験、予備試験】選択科目の選び方とおすすめ3選【合格率の高い選択科目etc】 | 法スタ
司法試験、予備試験の選択科目の選び方が知りたい自分で選べないからおすすめの選択科目を教えてほしい司法試験に合格がしやすい選択科目を知りたい あひるっぺ、 そろそろ…
人気がある選択科目は、労働法が最も多く、次いで倒産法、知的財産法、経済法、国際関係法(私法系)などがランクインしています。特に経済法は令和に入ってから人気が上がってきているようです。
予備試験との科目の違い
司法試験と予備試験は、司法試験の受験資格を得るための異なるルートですが、試験科目にも違いがあります。
予備試験は、短答式試験、論文式試験、口述試験の3段階で行われます。
司法試験には口述試験はありません。
予備試験の口述試験科目は、民事実務基礎と刑事実務基礎の2科目です。
また、予備試験の短答式試験は8科目(民法・商法・民事訴訟法、憲法・行政法、刑法・刑事訴訟法、一般教養科目)、論文式試験は10科目(憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、民事実務基礎、刑事実務基礎、選択科目)と、司法試験に比べて科目数が多くなっています。
科目免除制度について
司法試験にも予備試験にも、特定の科目について試験が免除される制度はありません。受験する形式の科目は全て受験する必要があります。
まとめ
司法試験は、短答式試験(憲法、民法、刑法)と論文式試験(憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、選択科目)で構成されています。
各試験形式で問われる能力や出題形式は異なります。また、論文式試験の選択科目は8科目の中から1つを選び、自分の興味や適性、実務での有用性などを考慮して慎重に選択することが推奨されています。予備試験とは試験形式や科目数に違いがありますが、どちらのルートも科目免除制度はありません。
司法試験の合格を目指す上で、これらの試験科目を深く理解し、それぞれの科目特性に合わせた対策を立てることが重要です。予備校の講座や教材も、効率的な学習の助けとなるでしょう