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営業中のATMでも『侵入』?最決平19・7・2にみる建造物侵入罪と偽計業務妨害罪の実行行為

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建造物侵入罪(刑法130条前段)における「侵入」とは、管理権者の意思に反する立入りをいうとされるのが通説・判例の立場です。
また、偽計業務妨害罪(刑法233条)における「偽計」も、単なる虚偽ではなく、人を欺罔し錯誤に陥れるような行為である必要があります。

最高裁平成19年7月2日決定は、ATMを「一般客を装って」長時間占拠し、他人のカード情報を盗撮する目的で立ち入った行為について、建造物侵入罪の「侵入」および偽計業務妨害罪の実行行為性を肯定しました。

本記事では、この判例の事案・判断内容を踏まえながら、建造物侵入罪の「意思侵害説」および偽計業務妨害罪の「偽計」の意義について整理し、司法試験の論文で使えるような形で論点を解説します。

目次

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最高裁平成19年7月2日決定における事案の概要

建造物侵入罪における侵入行為や偽計業務妨害罪における妨害行為が問題となった判例として、最高裁判所第一小法廷平成19年7月2日決定(以下「本判例」と言います。)があります。

本判例の事案は、以下のとおりです。

  1. 被告人は,共犯者らと,銀行ATMを利用する客のカードの暗証番号、名義人氏名、口座番号等を盗撮するため、ATMが複数台設置されており,行員が常駐しない同銀行支店出張所(看守者は支店長)に営業中に立ち入り,うち1台のATMを相当時間にわたって占拠し続けることを共謀した。
  2. 被告人らは、上記の共謀に基づき、盗撮目的で、ATMが6台設置されており、行員が常駐しないA銀行支店出張所に営業中に立ち入った。
  3. 被告人らは、上記出張所の1台のATMの広告用カードホルダーに盗撮用ビデオカメラを設置し、その隣のATMの前の床に受信機等の入った紙袋を置き、1時間30分間以上、適宜交替しつつ、ATMの前に立ってこれを占拠し続けた。その間,被告人らは、入出金や振込等を行う一般の利用客のように装い、ATMで適当な操作を繰り返すなどした。
  4. 被告人らは,前記共謀に基づき、翌日も、ATMが2台設置されており、行員が常駐しないA銀行支店の別の出張所で、約1時間50分間にわたって、同様の行為に及んだ。
  5. 被告人らがそれぞれの銀行支店出張所で上記の行為に及んでいた間には、被告人ら以外に他に客がいない時もあった。

この事案について、原審は、被告人に建造物侵入罪(刑法130条前段)および偽計業務妨害罪(刑法233条)が成立することを認めました。

この原審に対して、弁護人が上告したのが本判例です。

問題となった争点

本判例で問題となった争点は、被告人らのA銀行支店の各出張所への立ち入りが建造物侵入罪における「侵入」に該当するのかという点と、被告人らの行為が偽計業務妨害罪における実行行為に該当するのかという点です。

建造物侵入罪における「侵入」

本判例では、被告人らは、被害者であるA銀行支店の営業時間中に、一般客と同じ態様で立ち入っており、これを建造物への「侵入」と言えるのかが問題となります。

この建造物侵入罪における「侵入」の意義については、建造物侵入罪等の保護法益をどのように捉えるのかと関連してきます。

建造物侵入罪等の保護法益

建造物侵入罪等の保護法益については、以下のような争いがあります。

  • 平穏説:保護法益を住居などの事実上の平穏とする説。
  • 住居権説:保護法益を住居などの管理権の一内容として「誰に立ち入りを認めるか」の自由とする説。

判例は、古くは住居権説(旧住居権説:家長である夫に住居権があるとする説)を採用していましたが、戦後は平穏説を採用していると言われています。

ただし、明示はされていないものの、判例の中には、住居権説を採用していると思われるものもあります。

「侵入」の意義

建造物侵入罪等における「侵入」の意義については、以下の説があります。

  • 平穏侵害説:住居等の平穏を害する立入りを「侵入」とする説。
  • 意思侵害説:管理権者の意思に反する立入りを「侵入」とする説。

前記保護法益についての平穏説からは平穏侵害説が導かれ、住居権説からは意思侵害説から導かれることになります。

もっとも、平穏説の中にも、住居等の平穏は居住者等の自由な意思による支配が妥当している状態を言い、居住者等の意思に反する立入りが「侵入」に当たるとする説(主観的平穏侵害説)もあり、保護法益論と侵入の意義の理論的関連性は希薄になってきていると解されています。

判例は、意思侵害説を採用していると解されています(最高裁昭和58年4月8日判決など)。学説における通説も、この意思侵害説です。

意思侵害説における許諾権

意思侵害説からは、許諾権者が立入りを許諾しているのか否かによって、建造物侵害罪等の成否が異なってきます。そのため、誰が建物への立入りの許諾権を有しているのかは、重要な問題です。

建造物の場合は、看守者に許諾権があります。看守者とは、建物について管理権限を有する者のことです。

なお、住居の場合は、居住者に許諾権があります。居住者間に許諾権の優劣はありません。

偽計業務妨害罪の実行行為

偽計業務妨害罪の実行行為は、偽計を用いて人の業務を妨害する行為です。

偽計とは、人を欺罔し、あるいは人の錯誤または不知を利用することです。詐欺罪による欺罔行為よりも緩やかな概念であると解されています。

何が偽計による妨害行為かは、事案によって異なりますが、その範囲は拡張されてきていると言われています。

例えば、以下のようなものが偽計による妨害行為として認められています。

  • 駅弁業者の駅弁が不衛生であるとの虚偽のハガキを鉄道局に郵送した行為(大判昭和3年7月14日)
  • 外から分からないように漁場の海底に障害物を沈めて、漁業者の漁網を破損させ、漁獲できないようにさせた行為(大判大正3年12月3日)
  • 新聞社の経営者が、他紙の購読者を奪うために、他紙と紛らわしい題号等に変えて新聞を発行した行為(大判大正4年2月9日)
  • 電話の通話料金課金に用いる度数計器の作動を不可能にするマジックホンを電話機に設置した行為(最決昭和59年4月27日)

最高裁平成19年7月2日決定の判断

本判例は、被告人に建造物侵入罪および偽計業務妨害罪の成立を認めた原審を支持し、弁護人の主張を退けて、上告を棄却しました。

建造物侵入罪に関する判断

前記のとおり、本判例では、被告人らは、被害者であるA銀行支店の営業時間中に、一般客と同じ態様で立ち入っており、これを建造物への「侵入」と言えるのかが問題となっています。

この点について、本判例は、以下のとおり判示しています。

「被告人らは、現金自動預払機利用客のカードの暗証番号等を盗撮する目的で、現金自動預払機が設置された銀行支店出張所に営業中に立ち入ったものであり、そのような立入りが同所の管理権者である銀行支店長の意思に反するものであることは明らかであるから、その立入りの外観が一般の現金自動預払機利用客のそれと特に異なるものでなくても、建造物侵入罪が成立するものというべきである。」

本判例は、建造物侵入罪等の保護法益については触れていないものの、「侵入」の意義については、明確に意思侵害説を採用しています。

そして、被告人らが立ち入った目的が客のカードの暗証番号等を盗撮する目的であり、これは管理権者である銀行支店長の意思に反するから、「侵入」に該当すると判断しているのです。

なお、仮に「侵入」の意義について平穏侵害説を採用した場合は、平穏を害する態様の立入りとは言えないので、「侵入」に該当せず、建造物侵入罪は成立しないことになるでしょう。

偽計業務妨害罪に関する判断

本判例では、被告人らが、ATMを利用するふりをして、1時間30分または1時間50分近くATMを占拠した行為が、偽計によって業務を妨害する行為に該当するかが問題となっています。

この点について本判例は、以下のとおり判示しています。

「被告人らは、盗撮用ビデオカメラを設置した現金自動預払機の隣に位置する現金自動預払機の前の床にビデオカメラが盗撮した映像を受信する受信機等の入った紙袋が置いてあるのを不審に思われないようにするとともに、盗撮用ビデオカメラを設置した現金自動預払機に客を誘導する意図であるのに、その情を秘し、あたかも入出金や振込等を行う一般の利用客のように装い、適当な操作を繰り返しながら、1時間30分間以上、あるいは約1時間50分間にわたって、受信機等の入った紙袋を置いた現金自動預払機を占拠し続け、他の客が利用できないようにしたものであって、その行為は、偽計を用いて銀行が同現金自動預払機を客の利用に供して入出金や振込等をさせる業務を妨害するものとして、偽計業務妨害罪に当たるというべきである。」

本判例は、被告人らは、一般利用客であるかのように装って、適当な操作を繰り返すという、人を欺罔する「偽計」を行い、ATMを客の利用に供して入出金や振込等をさせる業務を妨害しているので、被告人の行為は偽計業務妨害罪に該当すると判示しています。

まとめ

以上のとおり、本判例は、被告人らの行為は建造物侵入罪の「侵入」に当たり、また、偽計による妨害行為であるとして、建造物侵入罪と偽計業務妨害罪の成立を認めています。

参考文献

刑法判例百選Ⅱ(第7版)38ページ

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