ケースメソッド。事案をもとに法律を学ぶ方式で、法科大学院でも採用されています。
法律というのは、社会の紛争を解決するためにあるルール。具体的事案を想定して法律を学ぶことは、法律の存在理由を学ぶことに他なりません。また、各種資格の筆記試験の多くは事例演習です。具体的事案にルールを当てはめる訓練は、早い方がいいに決まっています。中原『基本行政法』なども、ケースメソッドを採用しています。
他方で、学んだことのない分野のケースメソッドには困難が伴います。
ケースメソッドは、詰まるところ事例問題演習。基本的な知識がなければ、取り組むことは困難です。とりわけ行政法には、長く複雑な個別法が登場します。ケースメソッドのハードルの高さは、他の法律以上でしょう。中原『基本行政法』の難しさは、長めの事例問題にあるのではないでしょうか。
具体的事案を想定したい。でも、あまりハードルを上げないでもらいたい。わがままな初学者の希望を叶えてくださるのが、本書です。
本書でも、ケースメソッドが採用されています。具体的事案を想定しながら法律を学べるという、ケースメソッドのメリットは果たされているのです。しかし、ケースの行数は『基本行政法』より目に見えて少ない。まさに「やんわりと」したケースメソッドであり、初学者の方も「これくらいの行数なら読んでみようかな」と思われるのではないでしょうか。
確かに、別途問題演習を行う必要性はあります。しかし、それは中原『基本行政法』でも同じこと。最初から問題演習をする必要は、個人的には感じません。
なお本書には、「分厚い」という欠点があります。この点についての著者の見解は、姉妹書『行政法Ⅱ』の目次直前「ゼミ生との対話から」をご参照ください。
「私も薄いテキストほど魅力的で、夢のあるものはないと思います。(中略)しかし、初学者で飲み込みの悪い私には説明が不足していて、挫折することが多かったように記憶しています。確かにテキストは薄いのだけれども、結局、行と行の間を自分でつなぐことができず、長時間考え込んでしまい、読み通すことを断念した経験も多かったのです。」
身に覚えのある方も多いのではないでしょうか。私は覚えがありまくります。
また、挿入されるコラム・発展学習・注釈などをひとまず飛ばして読めば、かなり分量は減少するようにも思われます。図表も積極的に活用されていますので、実際の負担は小さいのではないでしょうか。
憲法マニア
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